無事にアルベルト様とレオとお別れすることができた。

 それにしても、婚約者がいながらレオと2年間も付き合ってたとは驚いた。
 私はルシアが憧れの女の子だと思って見ていたが、実は母親と似たようなビッチな一面もあったのかもしれない。

 誘惑の悪女ルシアを演じて男を翻弄してみようと思ったが、やはり無理があった気がする。

 スグラ王国の膿を出し、国を正しい方向に導く女王になるという目標を得た今の方がずっと自分らしく自然でいられる。

 寮の部屋に戻るとアリスが1人勉強していた。

 私が戻ってくるなり、腕に触れて治癒魔法を使ってくれる。

「ルシア様、お疲れですよね」

「ううん。アリス⋯⋯本当にありがとね。あなたとオスカーお兄様が来なければ大変なことになってた。それにしても治癒魔法って本当にあったかいわね」
 
 治癒魔法は使われるとホッカイロのように温かい。
(この温かさは、アリスの優しさだわ⋯⋯)
 
 アリスがもしオスカーと結婚したら、彼女は私の義姉になる。
 前世の姉も優しかったが、私はどうやら姉運に恵まれているようだ。

「アリスが私のお姉さんになってくれたら嬉しい⋯⋯」
「ええ? そんな、私は⋯⋯」

 思わず漏れた本音にアリスが顔を真っ赤にして照れている。
それにしてもオスカーを選択するとは、彼女もお目が高い。

オスカールートでは、ルシアが最後に寮を燃やさない限りはオスカーに見切りをつけられることはないはずだ。

 レオの秘密の部屋は、意外と彼があそこにいる時間が長くて捜索するのが難しそうだ。
 ライアンはレオの側にいるから搜索を頼めれば良いが、彼が柊隼人だと思うと最も関わりたくないと感じる。

「アリス、私、スグラ王国の女王になるわ。あなたにはオスカーお兄様を支えてくれると嬉しい」
「そんな⋯⋯あの⋯⋯頑張ります⋯⋯ルシア様はアルベルト王子殿下の事はよろしいのですか?」
 アリスは私がアルベルト様が好きだと思っているようだ。
(クッキーを一緒に作って送ったりしたからかな?)

「私、アルベルト様に恋愛感情はないわよ。大人っぽくて素敵とは思ったりもしたかな⋯⋯ミカエルが彼がお兄さんになるのは嫌みたいだから、彼と婚約することはないわ」
「そうなんですか」
 ミカエルはカイロス国王の子ということになっているので、私とは姉と弟になる。弟が嫌だという男を家族にしようとは思わない。

「あと、私、王宮から学校に通うことになるみたい。これからも、アリスのところに遊びに来ても良い? 私、もっとアリスと仲良くなりたいの」
「もちろんです」
 私は自分から友達を作ろうとしたのは、イギリスに留学してからだ。
 それまでは、特定の誰かと深く関らずなんとなく周りと仲良くしていた。

 しかし、海外に行くと自分から友達を作ろうとしなければ、誰も私と仲良くしようとしなかった。
 この異世界のルシアの立場だと、下心のある人間は私と繋がりを持とうと寄ってくる。
 だから、そういった人間とは距離を持って、自分で友達を選んでく必要がある。