「アリス!」
部屋に戻った途端、私はアリスに抱きついた。
一瞬彼女が戸惑ったのが分かったけれど、抱きしめ返してくれた。
(治癒の魔力を使ってくれているのかしら? 温かくて心が満たされていく感じがする⋯⋯)
「ステラン公子と一体何が⋯⋯」
背中越しに聞こえてくるアリスの疑問はもっともだ。
「特に何もないんだけれど、あまり得意じゃないかもあの人⋯⋯」
自分で言いながら、ならばどんな人が得意なのかと突っ込みたくなる。
(私って実は苦手な人ばかりの社会不適合者なのかも⋯⋯)
特に何もないというのは嘘だ。
男性経験のない私には抵抗のある雰囲気をレオとの間には感じた。
それに裏で人を陥れて嘲笑うような彼が私は苦手だ。
(ルシアがあんな男を本当に好きだったとは思えないわ⋯⋯)
私の中でルシアは気高い人だった。
確かに差別意識や嫉妬心もあって、アリスに嫌がらせをしたかもしれない。
それでも、10年婚約者として過ごしたミカエルを他の男と笑いものにするようなクズ女ではない。
私は寮にあった隠し部屋のような部屋を見て、ルシアがゲームのラストで寮を燃やしたのはあの部屋に隠したいものがあったのではないかと感じていた。
断罪イベントの卒業セレモニーが終わって、誰もいなくなった寮をルシアは燃やそうとしている。
ゲームの中で、ルシアはいわゆるバッドエンド的な友情エンドではミカエルと結婚している。
彼女はミカエルのことを王位に据えて、自分が支えていく未来を描けているということだ。
一方でレオとルシアが一緒になるルートは存在しない。
攻略対象キャラとのハッピーエンドルートでは国外追放されているが、エンディングロールで船で追放される時に彼女は晴れやかな表情をしていた。
(もしかして、全部ルシアの計算通りなの?)
『誘惑の悪女』のシナリオではルシア以外はみんな幸せになっているように見えた。
少なくとも、今のようにカイロス国王が不審死を遂げたり、ミカエルが闇堕ちしたりはしていない。
「ルシア様⋯⋯誰も信じられなくなっているかもしれませんが、私だけは信じてくれませんか? 私、ルシア様の役に立ちたいです」
私はアリスの言葉に思わず彼女の瞳を覗き見た。
本当にどこまでも澄み渡る空のような澄んだ瞳だ。
「一緒にいて欲しい。アリス⋯⋯あなたが思っている以上に私あなたのこと好きなのよ」
偽りない本音だった。
私は昔の自分のようにお人好しの彼女が好きだ。
闇堕ちしたミカエル、よく分からないアルベルト様、実は腹黒なレオ⋯⋯そしてライアン⋯⋯はっきり言って誰も信用できない。
「嬉しいです。私に、今、何かできることはありませんか?」
アリスの言葉に私こそ彼女に何かできることはないかと考えた。
(オスカーとアリスの恋のキューピッドになってみようかしら)
「一緒に私の実家⋯⋯ミエーダ侯爵邸に行かない?」
私の提案にアリスが頬を染める。
(今、オスカーのこと考えたわ⋯⋯本当にわかりやすくて、可愛いんだから)
トントン。
誰かが尋ねて来たようで、体が縮こまった。
(レオ? ミカエル? ライアンには絶対に会いたくないわ⋯⋯)
私を心配するように、アリスが扉を開けに行ってくれた。
「オスカー様⋯⋯」
アリスが呟いた声に顔をあげてみると、急いできたような乱れた銀髪が見えた。
「オスカーお兄様、どうしたのですか?」
「ルシア、本当に心配した⋯⋯これからはお前の為になんでもすると誓う、1人で苦しませてごめん⋯⋯」
私に駆け寄って強く抱きしめてくれるオスカーの体温が心地良い。
(アリス⋯⋯オスカー⋯⋯本当に気遣ってくれる人は、下心がある人とは全然違うのね⋯⋯)
「お父様とお母様は今どうしているのかしら?」
オスカーがチラリとアリスの方を覗き見た。
「お兄様、アリスは私の血筋のことも全てを知ってます。今、私が一番信頼し頼りにしている友人です」
気がつけば私は自然とアリスのことを友人と言っていた。
私は柊隼人の件があって以来、人に心の内を見せることがなかった。
だから、留学中に仲の良い子ができても、友人ではなく自分の中では知り合いだと思う事にしていた。
(ルシアは既にアリスに嫌がらせをしてるかもしれないのに、図々しかったかも⋯⋯)
不安な気持ちでアリスをみると、恥ずかしそうに微笑んでくれた。
「アリスと仲良くなってたんだね。アリス、ルシアを支えてくれてありがとう」
私はオスカーがアリスを呼び捨てした事に驚いた。
既に2人は結構仲良くなっているという証拠だ。
「今の状況を話すから、とりあえず座ろう」
私とアリスが自然とお互いのベッドに座ると、オスカーは一瞬迷って椅子に座った。
高位貴族としてセレブ生活をしているオスカーには、この部屋が狭くて身の置き場に困ってそうだ。
(でも、私はこの狭さが落ち着くんだよな⋯⋯)
「ルシアのことはサンタナ・ローランの隠し子ということで通すそうだ。サンタナ・ローランも非常に国際問題を含む問題のある相手だが、彼は他国の姫君を孕らせたことのある男だ。ナタリー・ローラン女王陛下も夫のそういった女癖には慣れている。一方で、母上がエミリアン王妃殿下を差し置いてカイロス国王陛下の子を産んだとなると非難は避けられない。カイロス国王陛下が生きていれば、母上を守っただろうが今はいない⋯⋯父上は、また母上だけを守る選択をされた⋯⋯」
オスカーが言いづらそうに伝えて来た事は予想していた事だった。
私が本物のルシアだったら、こんな両親からは離れたいと思うだろう。
(国外追放はルシアにとってもハッピーエンドね⋯⋯)
「お兄様は、カイロス国王の死をどのように思われていますか?」
「ステラン公爵と⋯⋯ルシアにはショックかもしれないがミカエル王太子が絡んでいるかな⋯⋯」
オスカーがステラン公爵の名を出したことに驚いた。
(レオも私の血筋について知っていた⋯⋯これはミカエルを利用した反逆計画ではないだろうか)
私は目の前の2人を信用している。
私の予想があっていたとしたら、味方をできるだけ作ってこの計画を潰さなければならない。
きっと、本物のルシアはこの反逆計画を知り、うまく立ち回り阻止したのだ。
私の行動の影響でミカエルが利用され、ステラン公爵の計画に有利なように進んでしまった可能性がある。
「お兄様、アリス⋯⋯私が予想するステラン公爵の反逆計画についてお話しさせてください」
私が反逆という強い言葉を使ったからだろうか、2人が一瞬驚いたような顔をした。
「まず、ミカエルが国王になったら、10ヶ月間は後見人としてステラン公爵が実権を握ります。この間に4親等以内の近親婚ができない法律を通します。その後、私とミカエルの血筋を明かし、私を女王に据えます。そして、ステラン公子と私を結婚させ私に子を産ませます。出産時に死んだことにして私を始末してしまえば、ステラン公爵家が事実上スグラ王国を乗っ取る事が可能です」
この世界は中世西洋をモデルにしているから、出産は命懸けだ。
そこで、王位継承権を持ちステラン公爵家の血を継ぐ子を手にいれ、私は出産時に死亡した事にすれば怪しまれない。
おそらくカイロス国王の死については、オスカーやライアンまでも疑っているから多くの人間が疑いの目を向けているだろう。
まずはカイロス国王の死の真相を明らかにして、ステラン公爵家の力を奪わなければならない。
「そんな恐ろしいこと⋯⋯でも、可能性は否定できないな。ルシア、美しいだけでなく、先を見通すこんな聡明な子だとは、今まで気がつかなかったよ」
「ルシア様、必ず計画を阻止しましょう」
オスカーは私を聡明だと言っているが、本当に聡明なのは本物のルシアだ。
彼女はおそらくアカデミーの成績で下位をとる事で、頭が悪いフリをしていた。
(みんなにルシアが侮られているのは、この世界に来た時から感じていたわ⋯⋯)
周囲を油断させ、レオに寄り添ったフリをして情報を得ていたのだろう。
その上、自分を断罪させ国外追放になることで自由も獲得している。
自分の能力をひけらかす事に気を取られ、ミカエルを追い詰めステラン公爵に取り入る隙を与えてしまった私は愚かだ。
でも、反省するのはここまでだ。
この世界でルシアとして生きていくならば、私は自分の幸せを掴む為に最善を尽くすし、スグラ王家を守る責任も果たしてみせる。
打たれ弱く、引き篭もった時の私はもういない。
今の私は陰口を受け流せる強さも持っている。
(『誘惑の悪女』ルシア⋯⋯私は私の方法でやりきってやろうじゃない!)
「私、速やかにミカエルとの婚約を破棄して、ローラン王国のアルベルト王子殿下と婚約します」
ステラン公爵家からの婚約話を突っぱねるには、他国の王子と婚約するのが1番だ。
私の予測通りなら、ルシアとレオ・ステランが婚約しなければ計画は上手くいかない。
(まずは、なんとかしてミカエルとの婚約を破棄しないと⋯⋯)
「え! アルベルト王子殿下? 確かにローラン王国の第2王子なら申し分ない相手だが⋯⋯」
「そうしましょう! きっと、上手くいきます!」
私の言葉にオスカーは戸惑った表情をし、アリスは涙ぐんで感動していた。
「そういえば、そのエメラルドの指輪は婚約指輪かい?」
オスカーが訝しげに私の左手の薬指にあるレオから貰った指輪を見ていた。
部屋に戻った途端、私はアリスに抱きついた。
一瞬彼女が戸惑ったのが分かったけれど、抱きしめ返してくれた。
(治癒の魔力を使ってくれているのかしら? 温かくて心が満たされていく感じがする⋯⋯)
「ステラン公子と一体何が⋯⋯」
背中越しに聞こえてくるアリスの疑問はもっともだ。
「特に何もないんだけれど、あまり得意じゃないかもあの人⋯⋯」
自分で言いながら、ならばどんな人が得意なのかと突っ込みたくなる。
(私って実は苦手な人ばかりの社会不適合者なのかも⋯⋯)
特に何もないというのは嘘だ。
男性経験のない私には抵抗のある雰囲気をレオとの間には感じた。
それに裏で人を陥れて嘲笑うような彼が私は苦手だ。
(ルシアがあんな男を本当に好きだったとは思えないわ⋯⋯)
私の中でルシアは気高い人だった。
確かに差別意識や嫉妬心もあって、アリスに嫌がらせをしたかもしれない。
それでも、10年婚約者として過ごしたミカエルを他の男と笑いものにするようなクズ女ではない。
私は寮にあった隠し部屋のような部屋を見て、ルシアがゲームのラストで寮を燃やしたのはあの部屋に隠したいものがあったのではないかと感じていた。
断罪イベントの卒業セレモニーが終わって、誰もいなくなった寮をルシアは燃やそうとしている。
ゲームの中で、ルシアはいわゆるバッドエンド的な友情エンドではミカエルと結婚している。
彼女はミカエルのことを王位に据えて、自分が支えていく未来を描けているということだ。
一方でレオとルシアが一緒になるルートは存在しない。
攻略対象キャラとのハッピーエンドルートでは国外追放されているが、エンディングロールで船で追放される時に彼女は晴れやかな表情をしていた。
(もしかして、全部ルシアの計算通りなの?)
『誘惑の悪女』のシナリオではルシア以外はみんな幸せになっているように見えた。
少なくとも、今のようにカイロス国王が不審死を遂げたり、ミカエルが闇堕ちしたりはしていない。
「ルシア様⋯⋯誰も信じられなくなっているかもしれませんが、私だけは信じてくれませんか? 私、ルシア様の役に立ちたいです」
私はアリスの言葉に思わず彼女の瞳を覗き見た。
本当にどこまでも澄み渡る空のような澄んだ瞳だ。
「一緒にいて欲しい。アリス⋯⋯あなたが思っている以上に私あなたのこと好きなのよ」
偽りない本音だった。
私は昔の自分のようにお人好しの彼女が好きだ。
闇堕ちしたミカエル、よく分からないアルベルト様、実は腹黒なレオ⋯⋯そしてライアン⋯⋯はっきり言って誰も信用できない。
「嬉しいです。私に、今、何かできることはありませんか?」
アリスの言葉に私こそ彼女に何かできることはないかと考えた。
(オスカーとアリスの恋のキューピッドになってみようかしら)
「一緒に私の実家⋯⋯ミエーダ侯爵邸に行かない?」
私の提案にアリスが頬を染める。
(今、オスカーのこと考えたわ⋯⋯本当にわかりやすくて、可愛いんだから)
トントン。
誰かが尋ねて来たようで、体が縮こまった。
(レオ? ミカエル? ライアンには絶対に会いたくないわ⋯⋯)
私を心配するように、アリスが扉を開けに行ってくれた。
「オスカー様⋯⋯」
アリスが呟いた声に顔をあげてみると、急いできたような乱れた銀髪が見えた。
「オスカーお兄様、どうしたのですか?」
「ルシア、本当に心配した⋯⋯これからはお前の為になんでもすると誓う、1人で苦しませてごめん⋯⋯」
私に駆け寄って強く抱きしめてくれるオスカーの体温が心地良い。
(アリス⋯⋯オスカー⋯⋯本当に気遣ってくれる人は、下心がある人とは全然違うのね⋯⋯)
「お父様とお母様は今どうしているのかしら?」
オスカーがチラリとアリスの方を覗き見た。
「お兄様、アリスは私の血筋のことも全てを知ってます。今、私が一番信頼し頼りにしている友人です」
気がつけば私は自然とアリスのことを友人と言っていた。
私は柊隼人の件があって以来、人に心の内を見せることがなかった。
だから、留学中に仲の良い子ができても、友人ではなく自分の中では知り合いだと思う事にしていた。
(ルシアは既にアリスに嫌がらせをしてるかもしれないのに、図々しかったかも⋯⋯)
不安な気持ちでアリスをみると、恥ずかしそうに微笑んでくれた。
「アリスと仲良くなってたんだね。アリス、ルシアを支えてくれてありがとう」
私はオスカーがアリスを呼び捨てした事に驚いた。
既に2人は結構仲良くなっているという証拠だ。
「今の状況を話すから、とりあえず座ろう」
私とアリスが自然とお互いのベッドに座ると、オスカーは一瞬迷って椅子に座った。
高位貴族としてセレブ生活をしているオスカーには、この部屋が狭くて身の置き場に困ってそうだ。
(でも、私はこの狭さが落ち着くんだよな⋯⋯)
「ルシアのことはサンタナ・ローランの隠し子ということで通すそうだ。サンタナ・ローランも非常に国際問題を含む問題のある相手だが、彼は他国の姫君を孕らせたことのある男だ。ナタリー・ローラン女王陛下も夫のそういった女癖には慣れている。一方で、母上がエミリアン王妃殿下を差し置いてカイロス国王陛下の子を産んだとなると非難は避けられない。カイロス国王陛下が生きていれば、母上を守っただろうが今はいない⋯⋯父上は、また母上だけを守る選択をされた⋯⋯」
オスカーが言いづらそうに伝えて来た事は予想していた事だった。
私が本物のルシアだったら、こんな両親からは離れたいと思うだろう。
(国外追放はルシアにとってもハッピーエンドね⋯⋯)
「お兄様は、カイロス国王の死をどのように思われていますか?」
「ステラン公爵と⋯⋯ルシアにはショックかもしれないがミカエル王太子が絡んでいるかな⋯⋯」
オスカーがステラン公爵の名を出したことに驚いた。
(レオも私の血筋について知っていた⋯⋯これはミカエルを利用した反逆計画ではないだろうか)
私は目の前の2人を信用している。
私の予想があっていたとしたら、味方をできるだけ作ってこの計画を潰さなければならない。
きっと、本物のルシアはこの反逆計画を知り、うまく立ち回り阻止したのだ。
私の行動の影響でミカエルが利用され、ステラン公爵の計画に有利なように進んでしまった可能性がある。
「お兄様、アリス⋯⋯私が予想するステラン公爵の反逆計画についてお話しさせてください」
私が反逆という強い言葉を使ったからだろうか、2人が一瞬驚いたような顔をした。
「まず、ミカエルが国王になったら、10ヶ月間は後見人としてステラン公爵が実権を握ります。この間に4親等以内の近親婚ができない法律を通します。その後、私とミカエルの血筋を明かし、私を女王に据えます。そして、ステラン公子と私を結婚させ私に子を産ませます。出産時に死んだことにして私を始末してしまえば、ステラン公爵家が事実上スグラ王国を乗っ取る事が可能です」
この世界は中世西洋をモデルにしているから、出産は命懸けだ。
そこで、王位継承権を持ちステラン公爵家の血を継ぐ子を手にいれ、私は出産時に死亡した事にすれば怪しまれない。
おそらくカイロス国王の死については、オスカーやライアンまでも疑っているから多くの人間が疑いの目を向けているだろう。
まずはカイロス国王の死の真相を明らかにして、ステラン公爵家の力を奪わなければならない。
「そんな恐ろしいこと⋯⋯でも、可能性は否定できないな。ルシア、美しいだけでなく、先を見通すこんな聡明な子だとは、今まで気がつかなかったよ」
「ルシア様、必ず計画を阻止しましょう」
オスカーは私を聡明だと言っているが、本当に聡明なのは本物のルシアだ。
彼女はおそらくアカデミーの成績で下位をとる事で、頭が悪いフリをしていた。
(みんなにルシアが侮られているのは、この世界に来た時から感じていたわ⋯⋯)
周囲を油断させ、レオに寄り添ったフリをして情報を得ていたのだろう。
その上、自分を断罪させ国外追放になることで自由も獲得している。
自分の能力をひけらかす事に気を取られ、ミカエルを追い詰めステラン公爵に取り入る隙を与えてしまった私は愚かだ。
でも、反省するのはここまでだ。
この世界でルシアとして生きていくならば、私は自分の幸せを掴む為に最善を尽くすし、スグラ王家を守る責任も果たしてみせる。
打たれ弱く、引き篭もった時の私はもういない。
今の私は陰口を受け流せる強さも持っている。
(『誘惑の悪女』ルシア⋯⋯私は私の方法でやりきってやろうじゃない!)
「私、速やかにミカエルとの婚約を破棄して、ローラン王国のアルベルト王子殿下と婚約します」
ステラン公爵家からの婚約話を突っぱねるには、他国の王子と婚約するのが1番だ。
私の予測通りなら、ルシアとレオ・ステランが婚約しなければ計画は上手くいかない。
(まずは、なんとかしてミカエルとの婚約を破棄しないと⋯⋯)
「え! アルベルト王子殿下? 確かにローラン王国の第2王子なら申し分ない相手だが⋯⋯」
「そうしましょう! きっと、上手くいきます!」
私の言葉にオスカーは戸惑った表情をし、アリスは涙ぐんで感動していた。
「そういえば、そのエメラルドの指輪は婚約指輪かい?」
オスカーが訝しげに私の左手の薬指にあるレオから貰った指輪を見ていた。