「宜しければお使いください」
私は泣いているギータ侯爵令嬢にハンカチを差し出した。
「ありがとうございます。でも、自分のハンカチを持っているので大丈夫です。お見苦しいところを見せてしまい申し訳ございませんでした」
「もうすぐ狩猟大会が行われるとお聞きしました。その際に、ライアン王子殿下にハンカチをプレゼントしてみるのはいかがでしょうか?」
「私は、サイラス王太子殿下の婚約者候補です。そのようなことはできません。この気持ちは一生私の心の中に閉じ込めます」
彼女は自分の気持ちについて、忘れるものではないと確信している。
まるで、私が虐めに対して感じる気持ちと同じだ。
「婚約者候補の能力を競い、サイラス王太子殿下の婚約者を決定するとお聞きしました」
「はい、私は父よりサイラス王太子殿下の婚約者になることを期待されています。政治や国際関係に対する知識の試験と面接をするのです。王妃に相応しいのは貴族令嬢を纏めたり、令嬢達から憧れられ流行を作り出したりできる方だと思います。しかし、試験ではそのようなことは問われません。現在の試験内容だと私に有利だと父は思っているのでしょう」
「ギータ侯爵令嬢は、きっとサイラス王太子殿下の婚約者に選ばれると思います。もし、そうなったとしてもライアン王子に想いを伝えてみてはいかがでしょうか? 狩猟大会の前日に王宮に来ませんか? そこで、ハンカチを渡せば周りには知られません。お世話になっているお礼だとでも言って、想いをハンカチに託してみてはどうでしょうか?一生引き摺りそうな思いを告げずに、後悔をしてほしくありません。私も、勇気を出します。私も、ハンカチを渡したい方がいるのです」
「もしかしてそれは、サイラス王太子殿下ですか?」
「えっ! なぜ分かったのですか?」
私は自分の気持ちを言い当てられたことに驚いてしまった。
「申し訳ございません。イザベラ様。試しに聞いてみましただけです。イザベラ様が婚約者であるライ国のルブリス王子にハンカチを渡すことは実質不可能です。私は2年前、サイラス王太子殿下がイザベラ・ライト公爵令嬢をライ国から連れてきたことだけが、彼の今までの行動で理解できませんでした。友好国の建国祭の前夜祭で、王子の婚約者を無断でルイ国に連れてきたのです。父を含め多くの貴族は王太子殿下のことだから、突飛に見える行動でも必ず意味がある。余計なことを尋ねようものなら、意図も理解できない愚か者だと減点されるだけだと考えていました。しかし、イザベラ様の件でライ国とは一触即発の状態にまで陥っていました。王太子殿下とイザベラ様の恋の逃避行だったと言われれば納得できます」
「私がサイラス王太子殿下を想っていることは、秘密にしてください。」
「もちろんです。私、初めて人と秘密を共有しました。イザベラ様と呼んでも良いですか?もう、呼んでしまっていますね。私のこともエリスとお呼びください。サイラス王太子殿下とイザベラ様は両思いなのですね。その場合ですと、私が婚約者に選ばれても、私はライアン王子と婚約することになりそうですね」
「エリス様も、そう思われるのですか?」
「ライアン王子が同じ予想をしていましたか? 当たりですね。イザベラ様の顔に書いてあります。私は婚約者候補になれば、最終的にライアン王子と結ばれるのですね」
さっきまで泣いていたエリス様が楽しそうに語り出す。
「なぜサイラス王太子殿下が婚約者候補になった女性を、ライアン王子の婚約者にすると思われるのですか?」
「サイラス王太子殿下は、何より優先していたルイ国を危険に晒してまで、イザベラ様を連れてきました。そこまで大切にしている女性を放って、他の女性と婚約するとは考え難いです。まずは、婚約者候補を決める試験をして、婚約者候補を決めるように煩い貴族を一時的に黙らせるつもりでしょう。その後、まだ婚約者のいないライアン王子に婚約者候補に選ばれた女性と婚約するように促して、時間を稼ぐ気なのだと思います。私、婚約者候補の試験に勝ってきますね。その後で父に自分がライアン王子を好きだと言うことを伝えるつもりです。そうすれば、サイラス王太子殿下の思惑通り時間も稼げますし、私もライアン王子と婚約できます」
「そのような形で良いのですか?ライアン王子に気持ちを伝えれば、彼もエリス様の想いを受け取ってくれると思うのですが」
ライアン王子はエリス様に関しては、結婚相手として合格だと言っていた。
「それでは時間を稼げません。私は秘密の共有者になってくれて、私の存在を受け入れてくれたイザベラ様の恋の応援もしたいのですよ。ライアン王子殿下は私の想いを受け入れてくれるかもしれませんが、王子殿下の心を得られる気はしません。ライアン王子殿下は恋とか愛とかとは、とても縁遠い方だと思います。でも、ルイ国は一夫一妻制です。ライアン王子殿下の妻になってしまえば、殿下の女は私だけです」
強気の笑顔を見せてくれたエリス様はとても綺麗だった。
私は泣いているギータ侯爵令嬢にハンカチを差し出した。
「ありがとうございます。でも、自分のハンカチを持っているので大丈夫です。お見苦しいところを見せてしまい申し訳ございませんでした」
「もうすぐ狩猟大会が行われるとお聞きしました。その際に、ライアン王子殿下にハンカチをプレゼントしてみるのはいかがでしょうか?」
「私は、サイラス王太子殿下の婚約者候補です。そのようなことはできません。この気持ちは一生私の心の中に閉じ込めます」
彼女は自分の気持ちについて、忘れるものではないと確信している。
まるで、私が虐めに対して感じる気持ちと同じだ。
「婚約者候補の能力を競い、サイラス王太子殿下の婚約者を決定するとお聞きしました」
「はい、私は父よりサイラス王太子殿下の婚約者になることを期待されています。政治や国際関係に対する知識の試験と面接をするのです。王妃に相応しいのは貴族令嬢を纏めたり、令嬢達から憧れられ流行を作り出したりできる方だと思います。しかし、試験ではそのようなことは問われません。現在の試験内容だと私に有利だと父は思っているのでしょう」
「ギータ侯爵令嬢は、きっとサイラス王太子殿下の婚約者に選ばれると思います。もし、そうなったとしてもライアン王子に想いを伝えてみてはいかがでしょうか? 狩猟大会の前日に王宮に来ませんか? そこで、ハンカチを渡せば周りには知られません。お世話になっているお礼だとでも言って、想いをハンカチに託してみてはどうでしょうか?一生引き摺りそうな思いを告げずに、後悔をしてほしくありません。私も、勇気を出します。私も、ハンカチを渡したい方がいるのです」
「もしかしてそれは、サイラス王太子殿下ですか?」
「えっ! なぜ分かったのですか?」
私は自分の気持ちを言い当てられたことに驚いてしまった。
「申し訳ございません。イザベラ様。試しに聞いてみましただけです。イザベラ様が婚約者であるライ国のルブリス王子にハンカチを渡すことは実質不可能です。私は2年前、サイラス王太子殿下がイザベラ・ライト公爵令嬢をライ国から連れてきたことだけが、彼の今までの行動で理解できませんでした。友好国の建国祭の前夜祭で、王子の婚約者を無断でルイ国に連れてきたのです。父を含め多くの貴族は王太子殿下のことだから、突飛に見える行動でも必ず意味がある。余計なことを尋ねようものなら、意図も理解できない愚か者だと減点されるだけだと考えていました。しかし、イザベラ様の件でライ国とは一触即発の状態にまで陥っていました。王太子殿下とイザベラ様の恋の逃避行だったと言われれば納得できます」
「私がサイラス王太子殿下を想っていることは、秘密にしてください。」
「もちろんです。私、初めて人と秘密を共有しました。イザベラ様と呼んでも良いですか?もう、呼んでしまっていますね。私のこともエリスとお呼びください。サイラス王太子殿下とイザベラ様は両思いなのですね。その場合ですと、私が婚約者に選ばれても、私はライアン王子と婚約することになりそうですね」
「エリス様も、そう思われるのですか?」
「ライアン王子が同じ予想をしていましたか? 当たりですね。イザベラ様の顔に書いてあります。私は婚約者候補になれば、最終的にライアン王子と結ばれるのですね」
さっきまで泣いていたエリス様が楽しそうに語り出す。
「なぜサイラス王太子殿下が婚約者候補になった女性を、ライアン王子の婚約者にすると思われるのですか?」
「サイラス王太子殿下は、何より優先していたルイ国を危険に晒してまで、イザベラ様を連れてきました。そこまで大切にしている女性を放って、他の女性と婚約するとは考え難いです。まずは、婚約者候補を決める試験をして、婚約者候補を決めるように煩い貴族を一時的に黙らせるつもりでしょう。その後、まだ婚約者のいないライアン王子に婚約者候補に選ばれた女性と婚約するように促して、時間を稼ぐ気なのだと思います。私、婚約者候補の試験に勝ってきますね。その後で父に自分がライアン王子を好きだと言うことを伝えるつもりです。そうすれば、サイラス王太子殿下の思惑通り時間も稼げますし、私もライアン王子と婚約できます」
「そのような形で良いのですか?ライアン王子に気持ちを伝えれば、彼もエリス様の想いを受け取ってくれると思うのですが」
ライアン王子はエリス様に関しては、結婚相手として合格だと言っていた。
「それでは時間を稼げません。私は秘密の共有者になってくれて、私の存在を受け入れてくれたイザベラ様の恋の応援もしたいのですよ。ライアン王子殿下は私の想いを受け入れてくれるかもしれませんが、王子殿下の心を得られる気はしません。ライアン王子殿下は恋とか愛とかとは、とても縁遠い方だと思います。でも、ルイ国は一夫一妻制です。ライアン王子殿下の妻になってしまえば、殿下の女は私だけです」
強気の笑顔を見せてくれたエリス様はとても綺麗だった。