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 愚痴りたいことがあって、内々の「あやかしラジオ」に告白しています。あやかしの皆さんだったら、自分の苦悩もわかってくれるでしょう。

 我々「あやかし」が「思い人」に、やたらと執着や偏愛して溺愛してしまう性質はご存知でしょう?
自分も婚約したのです。とびきり可愛い子と。あんなに可愛くて、心を弾ませる女の子には、お目にかかったことがないし、一緒にいるだけでクールにすましていても胸の中で幸せが溢れてきます。
 でも、家族と付き合うようになってから変なことに気がついた。姉が居るんですけれど、妹の彼女からも両親からも、ものすごく冷たくされて、まるで召使いか何かみたいな扱いされてました。
それで、ちょっと家族の込み入ったことは聞きづらかったんですけど、雑談まじりに聞いてみたんですよ。「あれって君のお姉ちゃんだよね?」って。そうしたらツンとした心震わせる憂い顔で「そうよ」って言うんですが、それ以上はあんまり喋りたがらない。
 どうも両親が、妹の彼女を大事にして、姉の方を余計なもので邪険にしてたのが原因だとか。元があんまり裕福な家庭でなかったから(没落した名家の末裔で体裁もあって、よけいに家計が苦しくて大変だったようで)、養育費も二人分は大変だったそうで、「あやかしの良い家に嫁がせられる娘が一人だけいれば十分なのに、不出来な姉がいるせいで大変だ」というのが、親御さんたちの言うに言われぬ理由だったとか。
 わからんではないけど、極端過ぎやしないかと思いながら、自分も口にしづらい。自分と彼女が婚約して家計を援助してなかったとしたら、大学どころか高校にすら通えたか。最悪は娘二人とも金持ちの成金の妾にでも売るくらいしかなかったかもしれない。それを思ったら、ご両親の生活や世間体への恐怖や不安や気苦労のはけくちが姉に向いて、妹の方も影響されたのかもしれない。


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 そしたら、その可哀想なお姉ちゃんが同じあやかしで最上位の鬼の貴公子に見初められて。
 良かったじゃん、これで万事解決だろうと思ったら、我が最愛の妹娘がプクッとふくれてやきもちなのか嫉妬なのか、不機嫌になって。やっぱり「玉の輿」に執着する両親のせいで、価値観が歪んじゃっているんだなって。
 その鬼のアニキにこっそり連絡や相談して、ご両親をたしなめるのに一芝居打って貰ったりもしました。俺、「鬼火で火だるま」パフォーマンスで男気を見せて、あとで鬼のアニキから「根性あるな」と褒められた。愛のためですから!
 あとでおそるおそる「他に俺よりもっと上のあやかしがお前を嫁に欲しがったらどうする」って彼女に聞いてみたら、「あなたしかいない」って即答で泣きながら(詳しくは書けません。結ばれました)。話していたら「今度は自分が親から邪険にされるんじゃないか」とか「お姉ちゃんは騙されて遊ばれて捨てられるんじゃないか」とか、不安がって怯えまくってて。「そんなことないしお前は俺が守るから」って言ってあげたらまた泣き出してしまって、慰めるのが大変でした。
 とどのつまりは毒親のせいで精神を病んでいて、心の底で人間不信だったんでしょう。あの子は勝ち気に見えても甘えんぼで寂しがりでデリケートなとこがあるんです。気が強いわがまま娘みたいでも「メンヘラ」でノイローゼというか。


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 それで穏やかに済むかと思っていたら、またしても不安やら嫉妬やらがストレス爆発したみたいで、ヒステリーでお姉ちゃんにつかみかかった拍子に階段から落としちゃって。これには鬼のアニキもカンカンに怒っちゃって「あの妹の娘はどっかおかしいんじゃないか? いい加減に見限って替わりの嫁候補を探せ」とまで言われるし、親戚からもさんざん似たようなこと言われて。
 でも本人に聞いたら「お姉ちゃんのせいで家族がバラバラになる」とか「お姉ちゃんは騙されている」とか言って泣く。
 生い立ちとそれまでの家庭環境が原因でよっぽど人間不信や不安でトラウマみたいになってるんです。お姉ちゃんに冷たくしているみたいでも、「分離不安」って言うんでしょうか、姉がいないと情緒不安定みたいになったり(虐待の矛先が自分に向くのを怖がっていたり、優しくて自分のわがままを聞いてくれる姉がいることで安心感があったみたいです)、家族が揃ってないことでも「お腹が痛くなる」んだって(変な歪んだとこがある親でも、あの子にはお父さん・お母さんですから)。
 他に「お姉ちゃんは男ができた途端に私に冷たくなったし家族をかえりみなくなった」「悪い男に騙されたバカ姉はあとでどうなっちゃうのか怖い」だそうで、本心では姉に甘えていたり、精神的に依存してたのもあったようで(娘を玉の輿や政略結婚の道具にしか考えない両親よりも姉の方を信用していて、自分の保護者みたいに感じていたようで)。歪んだ家族愛っていうか、愛もこじれるとこんな酷いことになっちゃうのかって人間の心の闇の深さを垣間見ました。
 それで鬼のアニキにも相談して釈明したら「何年か一人で暮らさせて精神的に自立させろ」って。家の親や親戚への説明でも裏で手を回して説得してくれて。やっぱり、恋人で婚約者の妹でもあるから、少しは気にかけてはくれたみたいです(さすがは俺には将来の義兄になる鬼アニキです)。結論で「あの娘の生活面で援助や手配したり見守る分にはいいが、しばらくは会わないように」と言い渡され、「あの毒親とはもう切り離せ」ということで満場一致しました。


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 愛してるよ、〇〇〇!
 いつか結婚して一緒に暮らして、鬼のアニキやお姉ちゃんのところにも遊びに行こうね!