あれから、5年の月日が経った。

 私の腹違いの兄である鈴木アオイさんは、父への復讐を誓った天才だった。

 彼は、予告通り父を社会的に抹殺した。

 彼が、尊厳を踏み躙られたら、問答無用に復讐するところは私と似ていると思った。

 父は自分が粗末にした命に復讐されたのだから、自業自得だ。

 父は今、どこにいるかわからない。
 そして、彼を追っかけていった母も消えてしまった。

 私が19年信じ続けた家庭は私にとって偽物だった。

 今、私は木嶋グループを率いる力をつけるベく修行中だ。
 国内のインバウンド需要も回復し、健太郎さんの会社も絶好調だ。

 そして、今日は健太郎さんと私の結婚式だ。

「アオちゃん、おめでとう。幸せになってね」

「ありがとう、寛也君」

 寛也は実家の病院の経営をしている。
 経営状況も良好らしく、彼は前のような自虐的なことを言わなくなった。

 私はプロポーズされた後、健太郎さんに彼のご家族が交通事故で亡くなった話を聞いた。

 その時、きっと寛也はその話を知っていたのだと確信した。

 彼は私に自動車運転免許を取るなと説得する時、交通事故について語ってきた。

 彼は私の未熟な運転が、健太郎さんを悲しませる可能性があるということを伝えたかったのだ。

 私が本当の自分で向き合ったら、優しい寛也に出会えた。

 彼は私の大切な友達だが、実は初めての彼氏だと言うのは私だけが知っている。

「アオちゃん、おめでとう。すごい綺麗」

「舞ちゃんこそ、素敵なウェディングケーキをありがとう」

 舞ちゃんはフランスでパティシエの修行をした後、帰国して自分の店を持った。

 繊細な見た目と丁寧に作り込まれた味が評判になって、お店には毎日行列ができている。

♢♢♢

「私、甘城健太郎はあなたの夫となるために自分を捧げます。そして私は今後、あなたが病める時も、健やかな時も貧しい時も、豊かな時も、喜びにあっても、悲しみにあっても、命のある限りあなたを愛し、この誓いの言葉を守って、あなたと共ににあることを約束します」

 目の前に私の愛する健太郎さんがいる。

 彼は大人で頼れる人だけれど、優し過ぎて危なっかしいところがたくさんある。
 でも、その優し過ぎるところが私は好きだから、守っていきたい。

「私、木嶋アオはあなたの妻となるためにあなたに自分を捧げます。そして私は今後、あなたが病める時も、健やかな時も、貧しい時も、豊かな時も、喜びにあっても、悲しみにあっても、命のある限りあなたを愛し、この誓いの言葉を守ってあなた共にあることを約束します」

 私達の結婚式にはお互いの両親がいない。

 それでも、本物の気持ちをくれる友人達が祝福してくれる。

「アオ、これから一緒に家族を作っていこうね」

「健太郎さん、お互い支え合っていきましょう」

 私はやっと今、本物の愛を掴んだ。
 この愛を彼と2人で、大切に育んでいく。