私はいつものように健太郎さんの部屋で食事を作り彼の帰りを待った。今日のディナーのメインはハート型のハンバーグにしてみた。甘く煮込んだニンジンやマッシュドポテトを付け合わせにして可愛い感じに盛り付けする。私達はまだ結婚こそしていないが、プロポーズも受けたし気持ち的には「新婚」だ。
鍵を開錠する音がして玄関に行くと「ただいま」と健太郎さんが微笑みかけてくる。
仕事で疲れているだろうに、そんなところを微塵も見せない爽やかなスマイルだ。
「お帰りなさい。健太郎さん! ご飯にします? お風呂にします? それとも⋯⋯」
流石にここで「私にする?」とは言えない。
私は処女だ。
「じゃあ、アオにしようかな?」
「えっ?」
私が驚いて健太郎さんの顔を見ると、軽く唇にキスをされた。心臓が飛び出しそうになり、赤くなった頬を隠すように彼のカバンを持ち撤収した。
やはり、健太郎さんは大人の男だ。自室でスーツを脱いでリラックスした格好になった健太郎さんがダイニングルームに来た。
テーブルで2人向き合って食事をする。私の家族は食卓を囲むことがほぼなかった。だから、この瞬間がとても幸せに感じる。
「ハンバーグ、ハート型だ。可愛い!」
「はい、気がついてくれてありがとうございます」
自分で言っていて、あからさまなハート型に気づかない方が難しいだろうと突っ込みたくなる。
「実は今日、腹違いの兄に会ってきました」
私の言葉に健太郎さんが驚いたように顔をあげる。
「実は私の父の木嶋隆は高校の時に後輩を孕ませて逃げたクズなんです」
「そ、そうなの?」
健太郎さんは優しいから、それはクズだねとは言わない。おそらく私の父親だから気を遣ってるのだろう。父親に何の情もない私が冷たいのかもしれない。
しかしながら、100人いたら99人は木嶋隆はクズだと言うはずだ。
「アオは大丈夫?」
私がショックを受けたのではないかと健太郎さんが心配し手を握ってくる。
確かに私は父に隠し子がいてショックを受けた。
「大丈夫です。兄は素敵な人でした」
今、私が大丈夫なのは健太郎さんのお陰だ。どんなに寂しさを感じても、私は家族に縋がり続けていた。
世界中を回ってきた私は友達と常に別れてきた。いつも一緒なのは家族だけで、子供の私は決して振り向かない両親を追い求め続けた。
「アオ、俺がいるよ」
私の心情を察するように、健太郎さんは立ち上がり私の席まで来て私を抱きしめてくる。密着したところから温もりが伝わって来て、心が満たされていくのを感じた。
私は彼の体に腕を回し、思いっきり抱きしめ返した。
「母もクズな父に夢中で私には興味がありません。それを寂しく思わなくなったのは健太郎さんのお陰です」
「絶対、俺は君に寂しい思いなんてさせない。幸せになろうね、アオ」
心に染みる健太郎さんの言葉に私はそっと目を瞑ると軽いキスが降ってきた。
食事が終わり39階の自分の部屋に戻ろうとすると、健太郎さんに後ろから抱きしめられた。
「帰したくない」
「私も帰りたくないです」
部屋にいる母が起きてたら、また暴言を吐かれると思うと身震いする。
今感じている温かい気持ちを急速冷凍されたくない。
健太郎さんは私の返事を聞くなり横抱きにした。体が宙に浮かぶ感覚に驚いて思わず彼に抱きつく。所謂お姫様抱っこというやつだ。
彼にそのまま寝室に連れてかれてベッドに寝かされる。間接照明が付いているだけの寝室は、非常にムーディーだ。そのまま彼が私に覆い被さってきたので、流石に焦った。
「待ってください! さ、先にお風呂に!」
「一緒に入る?」
いつも爽やかな健太郎さんが妖しく微笑み私は動揺した。やはり、タワーマンションの前でキスされた時も思ったが健太郎さんは大人の男だ。
寛也と付き合った事で少し男を知った気になっていたが、付き合った後の展開が全く違う。半年間付き合っても、手を繋ぐしかしてこなかった寛也は回帰前もピカピカな童貞だったのかもしれない。
「はっ、はい、喜んで!」
混乱してよく分からない事を口走ってしまったが健太郎さんは終始ご機嫌だった。
その夜、私は愛する健太郎さんと幸せな時を過ごした。
鍵を開錠する音がして玄関に行くと「ただいま」と健太郎さんが微笑みかけてくる。
仕事で疲れているだろうに、そんなところを微塵も見せない爽やかなスマイルだ。
「お帰りなさい。健太郎さん! ご飯にします? お風呂にします? それとも⋯⋯」
流石にここで「私にする?」とは言えない。
私は処女だ。
「じゃあ、アオにしようかな?」
「えっ?」
私が驚いて健太郎さんの顔を見ると、軽く唇にキスをされた。心臓が飛び出しそうになり、赤くなった頬を隠すように彼のカバンを持ち撤収した。
やはり、健太郎さんは大人の男だ。自室でスーツを脱いでリラックスした格好になった健太郎さんがダイニングルームに来た。
テーブルで2人向き合って食事をする。私の家族は食卓を囲むことがほぼなかった。だから、この瞬間がとても幸せに感じる。
「ハンバーグ、ハート型だ。可愛い!」
「はい、気がついてくれてありがとうございます」
自分で言っていて、あからさまなハート型に気づかない方が難しいだろうと突っ込みたくなる。
「実は今日、腹違いの兄に会ってきました」
私の言葉に健太郎さんが驚いたように顔をあげる。
「実は私の父の木嶋隆は高校の時に後輩を孕ませて逃げたクズなんです」
「そ、そうなの?」
健太郎さんは優しいから、それはクズだねとは言わない。おそらく私の父親だから気を遣ってるのだろう。父親に何の情もない私が冷たいのかもしれない。
しかしながら、100人いたら99人は木嶋隆はクズだと言うはずだ。
「アオは大丈夫?」
私がショックを受けたのではないかと健太郎さんが心配し手を握ってくる。
確かに私は父に隠し子がいてショックを受けた。
「大丈夫です。兄は素敵な人でした」
今、私が大丈夫なのは健太郎さんのお陰だ。どんなに寂しさを感じても、私は家族に縋がり続けていた。
世界中を回ってきた私は友達と常に別れてきた。いつも一緒なのは家族だけで、子供の私は決して振り向かない両親を追い求め続けた。
「アオ、俺がいるよ」
私の心情を察するように、健太郎さんは立ち上がり私の席まで来て私を抱きしめてくる。密着したところから温もりが伝わって来て、心が満たされていくのを感じた。
私は彼の体に腕を回し、思いっきり抱きしめ返した。
「母もクズな父に夢中で私には興味がありません。それを寂しく思わなくなったのは健太郎さんのお陰です」
「絶対、俺は君に寂しい思いなんてさせない。幸せになろうね、アオ」
心に染みる健太郎さんの言葉に私はそっと目を瞑ると軽いキスが降ってきた。
食事が終わり39階の自分の部屋に戻ろうとすると、健太郎さんに後ろから抱きしめられた。
「帰したくない」
「私も帰りたくないです」
部屋にいる母が起きてたら、また暴言を吐かれると思うと身震いする。
今感じている温かい気持ちを急速冷凍されたくない。
健太郎さんは私の返事を聞くなり横抱きにした。体が宙に浮かぶ感覚に驚いて思わず彼に抱きつく。所謂お姫様抱っこというやつだ。
彼にそのまま寝室に連れてかれてベッドに寝かされる。間接照明が付いているだけの寝室は、非常にムーディーだ。そのまま彼が私に覆い被さってきたので、流石に焦った。
「待ってください! さ、先にお風呂に!」
「一緒に入る?」
いつも爽やかな健太郎さんが妖しく微笑み私は動揺した。やはり、タワーマンションの前でキスされた時も思ったが健太郎さんは大人の男だ。
寛也と付き合った事で少し男を知った気になっていたが、付き合った後の展開が全く違う。半年間付き合っても、手を繋ぐしかしてこなかった寛也は回帰前もピカピカな童貞だったのかもしれない。
「はっ、はい、喜んで!」
混乱してよく分からない事を口走ってしまったが健太郎さんは終始ご機嫌だった。
その夜、私は愛する健太郎さんと幸せな時を過ごした。