「アオ、久しぶりの日本ね」
目を開けると、絶望顔だったはずの母が笑顔だった。
「私、死んでない⋯⋯」
思わず私は胸部をさすりながら呟く。
どうやら、死んでないらしい。
「日本は苦手だと言っていたか、大丈夫か?」
家政婦と不倫して妻子を捨てたサイテーな父が、涼やかな顔で話しかけてくる。
彼のこのセリフは私が大学生になり家族で日本に戻ってきた時に言われたセリフだ。
「全然大丈夫だけど」
私は中学生の時、日本に3ヶ月程戻ってきたことがある。
その時に今まであったことのないような虐めにあったのだ。
私は空気も読まず、自分をひけらかした事で周りに調子に乗っていると言われ虐められた。
教師を含むクラス全体の虐めにあったのは初めてだった。
海外にいた時に人種差別的な言動を虐めと思っていたのは甘いものだった。
日本は目立つと虐められる。
空気を読まないと、大人にも殺されるというのが私の見解だ。
しかし、空気を読んで大人しくしていた結果、私は親と恋人と友人に裏切られる破滅を味わった。
だったら、日本でも私は私らしく振る舞うことにした。
謙虚さを美徳と考える日本ではうざがられるだろう。
私はこれから自分の全てをひけらかしていく。
日本以外では謙虚にしていたら生きていけない。
自分は誰より価値があると勘違いでも示し続けなければ、軽んじられる。
「それよりも、パパはママを愛してないなら離婚したらどお?」
私は今が夢だとしても、父に会ったら絶対に言いたかったことを言った。
父と母はお互いに初恋の相手と結婚できたと、毎日のように言い合っていた。
2人は恥ずかしいくらいにラブラブだったはずだ。
しかし、私の記憶によると父は母を最初から愛していなかったと言ってた気がする。
「何を言っているの、アオ! パパとママは愛し合っているわよ」
私の質問に慌てるように応えたのは父ではなく、母だった。
私は思わず母の顔を見た。
これ以上ないくらい必死な形相を母はしていた。
明らかに母はこの時点で、自分が父の愛を失っていることに気がついている。
私は自分が一緒に住んでいながら、2人の関係性が見えていなかったのだと思った。
母は、生粋のお嬢様で父しか男を知らない。
そして育ちが違うと、結婚の時は親戚中から反対されたらしい。
親に逆らってまでした結婚であるがゆえに、父への愛を貫こうとしているのかもしれない。
「パパは、ママのお金目当てで結婚したんじゃないの?」
私が父を見据えながら言った言葉に、あたりが静まり返る。
「そんなわけない、翠ちゃんを愛してるから結婚したに決まっているだろ。翠ちゃんは俺の全てだ。アオ、明日から大学だろ。これ、パパからのプレゼントだ」
父の何もかもが胡散臭く感じて、私は寒気を感じた。
今、渡されているプレゼントは100万円以上するブランドバッグだ。
私はこのバッグが原因で、パパ活しているだの誹謗中傷を浴びる予定だ。
「いらない。私はこれからは自分の力で生きていきたい。このバッグはお爺ちゃまからのお小遣いで買ったもの? もう、アラフィフなのにパパはお小遣いをもらっているの? 私はパパからは今後何も貰わない。このバッグもいらないわ」
私はバッグを父に突き返しながら言った。
父は結婚して以来、月300万円のお小遣いを母方の祖父から貰っている。
父は祖父の経営する木嶋グループ傘下の貿易会社に就職して、次期社長として扱われていた。
その地位は、母と結婚したから得られたものだ。
正直、記憶の中で不倫をしていた父が気持ち悪くてしょうがない。
私のような成人した娘がいても、ずっと彼は男だったということだ。
このような気持ち悪い男の施しは受けない。
「アオ、なんてこと言うの。パパに謝りなさい」
私は気がつけば母に引っ叩かれていた。
訳がわからない、私は未来で裏切られる彼女の為に行動したつもりだった。
目を開けると、絶望顔だったはずの母が笑顔だった。
「私、死んでない⋯⋯」
思わず私は胸部をさすりながら呟く。
どうやら、死んでないらしい。
「日本は苦手だと言っていたか、大丈夫か?」
家政婦と不倫して妻子を捨てたサイテーな父が、涼やかな顔で話しかけてくる。
彼のこのセリフは私が大学生になり家族で日本に戻ってきた時に言われたセリフだ。
「全然大丈夫だけど」
私は中学生の時、日本に3ヶ月程戻ってきたことがある。
その時に今まであったことのないような虐めにあったのだ。
私は空気も読まず、自分をひけらかした事で周りに調子に乗っていると言われ虐められた。
教師を含むクラス全体の虐めにあったのは初めてだった。
海外にいた時に人種差別的な言動を虐めと思っていたのは甘いものだった。
日本は目立つと虐められる。
空気を読まないと、大人にも殺されるというのが私の見解だ。
しかし、空気を読んで大人しくしていた結果、私は親と恋人と友人に裏切られる破滅を味わった。
だったら、日本でも私は私らしく振る舞うことにした。
謙虚さを美徳と考える日本ではうざがられるだろう。
私はこれから自分の全てをひけらかしていく。
日本以外では謙虚にしていたら生きていけない。
自分は誰より価値があると勘違いでも示し続けなければ、軽んじられる。
「それよりも、パパはママを愛してないなら離婚したらどお?」
私は今が夢だとしても、父に会ったら絶対に言いたかったことを言った。
父と母はお互いに初恋の相手と結婚できたと、毎日のように言い合っていた。
2人は恥ずかしいくらいにラブラブだったはずだ。
しかし、私の記憶によると父は母を最初から愛していなかったと言ってた気がする。
「何を言っているの、アオ! パパとママは愛し合っているわよ」
私の質問に慌てるように応えたのは父ではなく、母だった。
私は思わず母の顔を見た。
これ以上ないくらい必死な形相を母はしていた。
明らかに母はこの時点で、自分が父の愛を失っていることに気がついている。
私は自分が一緒に住んでいながら、2人の関係性が見えていなかったのだと思った。
母は、生粋のお嬢様で父しか男を知らない。
そして育ちが違うと、結婚の時は親戚中から反対されたらしい。
親に逆らってまでした結婚であるがゆえに、父への愛を貫こうとしているのかもしれない。
「パパは、ママのお金目当てで結婚したんじゃないの?」
私が父を見据えながら言った言葉に、あたりが静まり返る。
「そんなわけない、翠ちゃんを愛してるから結婚したに決まっているだろ。翠ちゃんは俺の全てだ。アオ、明日から大学だろ。これ、パパからのプレゼントだ」
父の何もかもが胡散臭く感じて、私は寒気を感じた。
今、渡されているプレゼントは100万円以上するブランドバッグだ。
私はこのバッグが原因で、パパ活しているだの誹謗中傷を浴びる予定だ。
「いらない。私はこれからは自分の力で生きていきたい。このバッグはお爺ちゃまからのお小遣いで買ったもの? もう、アラフィフなのにパパはお小遣いをもらっているの? 私はパパからは今後何も貰わない。このバッグもいらないわ」
私はバッグを父に突き返しながら言った。
父は結婚して以来、月300万円のお小遣いを母方の祖父から貰っている。
父は祖父の経営する木嶋グループ傘下の貿易会社に就職して、次期社長として扱われていた。
その地位は、母と結婚したから得られたものだ。
正直、記憶の中で不倫をしていた父が気持ち悪くてしょうがない。
私のような成人した娘がいても、ずっと彼は男だったということだ。
このような気持ち悪い男の施しは受けない。
「アオ、なんてこと言うの。パパに謝りなさい」
私は気がつけば母に引っ叩かれていた。
訳がわからない、私は未来で裏切られる彼女の為に行動したつもりだった。