アオさんが軽い女扱いされているのが許せなくて、気がついたら彼女をフィアンセだと言っていた。
その時、俺、甘城健太郎は10歳以上年下であろう妹のように思っていたアオさんを異性として自分が見始めていたことに気がついた。
俺が彼女をフィアンセだと紹介すると、彼女を囲っていた3人は戸惑いながらも去っていった。
勝手にフィアンセ扱いしたのをアオさんは怒っていないようだった。
でも、彼女の眉毛が下がっていたので困っていたのかもしれない。
女子大生の彼女から見たら、アラサーの俺はおじさんだ。
その上、昨日会ったばかりの男に好意を寄せられるなど、恐怖でしかないだろう。
勝手にフィアンセ扱いしたことを謝るべきだろうが、本当にそうだったら良いのにと思ってしまう気持ちが邪魔をする。
自分の気持ちに気がついてしまうと、少しでもアオさんと一緒にいたくてドライブに誘ってしまった。
「健太郎さんは車が運転できるんですね。やっぱり車は日本車ですよね」
眉毛が下がってたアオさんが笑顔で車に乗ってくれて、ホッとする。
同時に昨日会ったばかりの男の車に乗ってしまう、彼女が心配になった。
「俺がこのまま空港に向かって、アオさんを誘拐するつもりだったらどうするのですか? よく知らない人の車には絶対に乗らないでくださいね」
彼女は海外生活が長かったようだが、危険な目にあったことはないのだろうか。
「このまま誘拐する勇気がないのなら、そのようなこと言わないでくださいね。健太郎さんこそ、よく知らない人を車に乗せてはダメですよ。強盗犯の可能性もありますから」
アオさんがドヤり顔で言ってくるのが、とても可愛い。
そして、誘拐されたいと思うくらい、今アオさんの家の環境が良くないのだろう。
アオさんは「父が母を愛していないことで家庭が崩れていきそう」だと言っていた。
俺の見た第一印象のアオさんの家族の印象は「子供に無関心な家庭」という印象だった。
木嶋隆が木嶋グループを将来率いる次期リーダーとして、ビジネス書でインタビューに応えているのを読んだことがある。
宝物は「家族」だとこたえていて、羨ましく思ったものだ。
しかし、実情はとてもそのようには見えなかった。
俺は初めて彼女を見た時に、彼女のことがとても心配になった。
引っ越しをしてきた彼女は、両親の後ろをトボトボついて行っていた。
明らかに両親に気を遣っている気が弱そうな彼女に、亡くなった妹のことを思い出した。
中学3年生の時、結婚記念日の両親にお小遣いで旅行をプレゼントした。
俺は高校受験前で勉強をしたかったので、10歳年下の妹は家で自分が面倒を見て留守番させると伝えていた。
しかし、旅行の当日、妹は明らかに両親について出かけたいようだった。
俺は妹が家に残される俺や、両親を2人きりにすることに気を遣い「自分も行きたい」と言えないことに気がついた。
旅館に電話すると、未就学児だし妹を連れてきても追加料金を取らないとのことだった。
俺は妹の喜ぶ顔が見たくて、妹も急遽両親に旅行に行かせることにした。
「旅行に行ける」と聞いた時、嬉しそうに笑った妹の顔が今でも脳裏から離れない。
その旅行の帰りに、飲酒運転の車が対向車線を走っていた両親と妹の乗った車に衝突した。
3人とも即死だった。
俺は、その後、親戚の家に引き取られた。
親戚はよくしてくれたが、いつも迷惑をかけないように気を遣っていた。
アオさんを見た時、妹が生きていたら彼女と同じ年くらいだと思った。
実際のアオさんはお淑やかで大人しそうな見た目とは違った。
賢く、堂々としていて、発言がいちいち危なっかしい。
一緒にいる時間が思った以上に楽しくて、そして彼女のことが心配で合鍵を渡した。
自分が彼女を異性として見ているとは思ってもみなかった。
大学の時に4年間付き合った彼女は、俺が大手企業の内定を蹴って起業したいと伝えると怒り出した。
トラウマになるような暴言をたくさん吐かれて、振られたのを覚えている。
俺も最初は会社勤めをしようとして、就職活動をしていた。
でも、自分の会社を作りたいという気持ちを諦められなかった。
1人から始めた会社は、家族くらいの大きさになり、今では多くの支店を抱える企業に急成長した。
俺はその時、自分が家族みたいに守れる存在が欲しかったから、起業を諦められなかったのだと思った。
会社が大きくなると、俺に暴言を吐いて振った元カノが擦り寄ってきた。
その姿に吐き気がしてしまって、俺は女性というものが苦手になってしまった。
アオさんと会ってから彼女のことばかり考えてしまっていても、それは女性としてではなく守れなかった妹として彼女を見ていると思い込もうとしていた。
「アオさん、暗くなってきてしまいましたが、何時まで帰れば大丈夫ですか?」
彼女と一緒にいたくて、拉致するように車に乗せてしまったが彼女にも予定があるのではないだろうか。
「23時です。あと、5時間は一緒にいられますね」
窓越しの夕日に照らされたアオさんが、美しくて見惚れそうになる。
年齢差を考えると引かれるとはわかっていても、この想いを告白したい。
その時、俺、甘城健太郎は10歳以上年下であろう妹のように思っていたアオさんを異性として自分が見始めていたことに気がついた。
俺が彼女をフィアンセだと紹介すると、彼女を囲っていた3人は戸惑いながらも去っていった。
勝手にフィアンセ扱いしたのをアオさんは怒っていないようだった。
でも、彼女の眉毛が下がっていたので困っていたのかもしれない。
女子大生の彼女から見たら、アラサーの俺はおじさんだ。
その上、昨日会ったばかりの男に好意を寄せられるなど、恐怖でしかないだろう。
勝手にフィアンセ扱いしたことを謝るべきだろうが、本当にそうだったら良いのにと思ってしまう気持ちが邪魔をする。
自分の気持ちに気がついてしまうと、少しでもアオさんと一緒にいたくてドライブに誘ってしまった。
「健太郎さんは車が運転できるんですね。やっぱり車は日本車ですよね」
眉毛が下がってたアオさんが笑顔で車に乗ってくれて、ホッとする。
同時に昨日会ったばかりの男の車に乗ってしまう、彼女が心配になった。
「俺がこのまま空港に向かって、アオさんを誘拐するつもりだったらどうするのですか? よく知らない人の車には絶対に乗らないでくださいね」
彼女は海外生活が長かったようだが、危険な目にあったことはないのだろうか。
「このまま誘拐する勇気がないのなら、そのようなこと言わないでくださいね。健太郎さんこそ、よく知らない人を車に乗せてはダメですよ。強盗犯の可能性もありますから」
アオさんがドヤり顔で言ってくるのが、とても可愛い。
そして、誘拐されたいと思うくらい、今アオさんの家の環境が良くないのだろう。
アオさんは「父が母を愛していないことで家庭が崩れていきそう」だと言っていた。
俺の見た第一印象のアオさんの家族の印象は「子供に無関心な家庭」という印象だった。
木嶋隆が木嶋グループを将来率いる次期リーダーとして、ビジネス書でインタビューに応えているのを読んだことがある。
宝物は「家族」だとこたえていて、羨ましく思ったものだ。
しかし、実情はとてもそのようには見えなかった。
俺は初めて彼女を見た時に、彼女のことがとても心配になった。
引っ越しをしてきた彼女は、両親の後ろをトボトボついて行っていた。
明らかに両親に気を遣っている気が弱そうな彼女に、亡くなった妹のことを思い出した。
中学3年生の時、結婚記念日の両親にお小遣いで旅行をプレゼントした。
俺は高校受験前で勉強をしたかったので、10歳年下の妹は家で自分が面倒を見て留守番させると伝えていた。
しかし、旅行の当日、妹は明らかに両親について出かけたいようだった。
俺は妹が家に残される俺や、両親を2人きりにすることに気を遣い「自分も行きたい」と言えないことに気がついた。
旅館に電話すると、未就学児だし妹を連れてきても追加料金を取らないとのことだった。
俺は妹の喜ぶ顔が見たくて、妹も急遽両親に旅行に行かせることにした。
「旅行に行ける」と聞いた時、嬉しそうに笑った妹の顔が今でも脳裏から離れない。
その旅行の帰りに、飲酒運転の車が対向車線を走っていた両親と妹の乗った車に衝突した。
3人とも即死だった。
俺は、その後、親戚の家に引き取られた。
親戚はよくしてくれたが、いつも迷惑をかけないように気を遣っていた。
アオさんを見た時、妹が生きていたら彼女と同じ年くらいだと思った。
実際のアオさんはお淑やかで大人しそうな見た目とは違った。
賢く、堂々としていて、発言がいちいち危なっかしい。
一緒にいる時間が思った以上に楽しくて、そして彼女のことが心配で合鍵を渡した。
自分が彼女を異性として見ているとは思ってもみなかった。
大学の時に4年間付き合った彼女は、俺が大手企業の内定を蹴って起業したいと伝えると怒り出した。
トラウマになるような暴言をたくさん吐かれて、振られたのを覚えている。
俺も最初は会社勤めをしようとして、就職活動をしていた。
でも、自分の会社を作りたいという気持ちを諦められなかった。
1人から始めた会社は、家族くらいの大きさになり、今では多くの支店を抱える企業に急成長した。
俺はその時、自分が家族みたいに守れる存在が欲しかったから、起業を諦められなかったのだと思った。
会社が大きくなると、俺に暴言を吐いて振った元カノが擦り寄ってきた。
その姿に吐き気がしてしまって、俺は女性というものが苦手になってしまった。
アオさんと会ってから彼女のことばかり考えてしまっていても、それは女性としてではなく守れなかった妹として彼女を見ていると思い込もうとしていた。
「アオさん、暗くなってきてしまいましたが、何時まで帰れば大丈夫ですか?」
彼女と一緒にいたくて、拉致するように車に乗せてしまったが彼女にも予定があるのではないだろうか。
「23時です。あと、5時間は一緒にいられますね」
窓越しの夕日に照らされたアオさんが、美しくて見惚れそうになる。
年齢差を考えると引かれるとはわかっていても、この想いを告白したい。