主要駅から徒歩七分。常に大繁盛というわけではないものの、大通りに面した立地のバイト先のコンビニは、帰宅時間に重なる十八時から二十時はそこそこに客の入りがある。
 だが、しかし。その時間を過ぎると、十七時台と同じ暇さに舞い戻ってしまうので、そこが少し難点だ。
 ある程度忙しいほうが時間を持て余さなくて済むし、それに、と。黙々と品出しをする瀬尾くんを眺める。
 ――べつにいいんだけど、あからさまなんだよなぁ、瀬尾くん。
 細々と働くことは素晴らしくとも、「ふたりでレジに立っていることが嫌」との目論見が行動から透けている。
 客がいないことをいいことに、カウンターの奥の台にもたれたまま、俺は溜息を呑んだ。いや、まぁ、いいんだけどね、本当、本当。
「ん……?」
 視線を感じた気がして、自動ドアの向こうに目を向ける。大通りを行く人の波はまばらで、立ち止ってこちらを見る不審者の姿はない。だが、気になる。
 台から背を離し、レジカウンターからそっと身を乗り出したところで、「なに見てんすか」という声がかかった。
「美人でもいました?」
「瀬尾くん」
 レジに戻るなり早々と台にもたれた瀬尾くんに、半ば反射で笑いかける。俺もしていたし、文句を言うつもりは微塵もないのだが。きみ、本当に新人感ないな。俺、入ったばかりのころはもっときょどきょどしてたよ。仕事もぜんぜん覚えられなかったし。
 要領が良くて羨ましい。だが、話しかけてくれたことは素直にうれしい。
「べつに。あ、そうだ。瀬尾くんはどんな子が好きとかあるの?」
「それ、答えなきゃ駄目なやつです?」
「……ただの世間話だし」
 ふたりで無言で立ってるのも気まずいじゃんというだけの。それをそこまで嫌そうな顔するか、おまえ。瀬尾くんよ。
 うんざりと頭上にかかる時計に目をやる。勤務終了まで、あと二十五分。はよ終われ。俺、無言嫌いなんだよ。相手がなに考えてんのかなって気になるから。
 まぁ、こいつの場合、しゃべりかけても「うぜ」としか思わなそうだけど。
 そんな相手に愛想を振り続けるほど、俺の心は強くできていない。結局、俺は残り二十五分。居心地の悪い時間を過ごすことになったのだった。