「ねえ、期末テストまであと2週間だって!」

休み時間、彼女はそう騒ぎ僕のところに駆け寄ってきた。

「さては今回も教えてって?」
「うんうん!!!」
「えーしょうがないなぁ」
「やったー!心様一!」

とても嬉しそうに彼女は笑っている。
なんせ僕達は自他ともに認めるラブラブカップル。彼女のために時間を使うのなんて当たり前だと思ってしまうんだ。だから、たまに集中が切れる彼女と他愛もない話をしたり、ふざけあったりもしながら、彼女のペースに合わせて根気強く勉強を教えた。

「ここの問題の公式はわかる?」
「うーん、わからない、数学ってどうしてこんなに複雑なの?」
「数学は単純だよ。答えは1つしかないんだよ?」
「あーー無理無理!これじゃあ赤点取って夏休みなくなっちゃうよー!」

図書室は落ち着くところだから、いつもより集中できると思ったのに。彼女は、落ち込んで項垂れ、口をふくらませながらシャープペンをくるくる回し始めた。

「なくなったら嫌なの?」
「だってそりゃあ!!実はね、夏休みのために立てた計画があるんだー!なんだと思う?」

ニヤニヤしながら僕の目をじーっと見つめてきた。

「じゃあ3択にするから答えてね!
じゃーん!私がこの夏やりたいことクイーズ!
1、水族館に行きたい
2、動物園に行きたい
3、夏祭りに行って花火を見たい
どれだと思う??」
「答えればいいの?」
「うん!」

8月の真夏に動物園はないな。あったとしても暑くて絶対に嫌。水族館もいつでも行けるのに、わざわざこの夏にやりたいこととして取り上げない気がする。と、なると消去法で答えは1つしかない。

「答えは3番の夏祭りへ行って花火をみたい、かな?」
「正解!!!私は心と花火を見に行きたいの!!」

花火か。懐かしいな、夏祭り自体が、祖母と小さい頃に数回だけ行った時以来と考えるといつぶりだろうか。

「わかったよ。行こう。でもその前にテスト勉強して赤点回避だよ」
「やりたくないです」
「ここで辞めたら、赤点たくさん取っちゃって、補習だらけで、夏祭り行けないなぁ残念だなぁ」
「それは嫌だ!!」

彼女はメラメラ燃えていた。感情がコロコロ変わって小動物みたいで本当に可愛い。

「じゃあ頑張る!!さあさあやろうでは無いか心殿。」
「わかった、じゃあ頑張ろうね」

大きな敵に挑むため、僕達は手を動かし始めた。


そして、テスト期間も終え、とうとう期末テストが返ってくる日になってしまった。結果はどうなのだろうか。僕は今回も上位をキープしていたが、やはり彼女が心配だ。
視線を移すと彼女がぶるぶると震えていて、
休み時間になった途端、彼女がぎこちなく歩きながら僕の席にきた。

「小晴どうした?もしかしてやばい感じ?」

僕は恐る恐る聞いてみた。

「怖いからみてない。自分ではみれないから、一緒にみてお願い!」

今にも怪獣に食べられる寸前のように怯えてる彼女と、僕らの夏祭りがかかった運命の通知表を開く。

「や...やったー!回避した!補習なし!よかったあ。心ありがとう!」
「よかったね。僕も緊張した。数学はギリギリだったけどよく頑張りました。」

甘い笑顔を見せる彼女の頭を撫でるという小恥ずかしいことをしたが故に、彼女の顔はたこのように真っ赤に染まった。

「ちょ、何してるの!純粋無垢の私の頭撫でるなんてセクハラ!!」

湯気が出そうなほど赤い彼女は本当におかしく、とても可愛いので、隙をついて少しいじめてみるのも楽みだったりする。

「じゃあセクハラ男と花火大会は行けないね。あー悲しいなー」

彼女は、してやられたという目線でこちらを見てきた。

「茶番は置いといて、希望の花火大会行きが決まったわけだけど予定どうする?何時に集まる?」

僕がそう聞くと彼女は

「意地悪」

と、拗ねていた。

「ごめんって笑」
「ちゃんと行くんだからね!」
「分かってるよ。」

そう話すと彼女は、パンフレットを鞄から取り出した。驚くほどに用意周到だった彼女と、花火が始まる時刻を確認し、2人で集まる待ち合わせ場所を決めた。

「よし決まったね。花火大会は20時からだからその前までの2時間はご飯食べたりしよう。」
「じゃあきまり!当日楽しもう!」

2人でそうかわすとちょうど予鈴がなりいつもの日常へと戻って行った。
僕もすごく楽しみにしている。この際浴衣着てみようかな、なんて思ったりして。