山田さんと面識はない萌が、案外あっさり参加を承諾してくれて、山田さんと伊藤さん、私と萌の4人で飲み会は始まった。伊藤さんが、画面越しに乾杯の音頭をとる。

「オンライン飲み会は参加したことないんやけど、家のひとり飲みとどこが違うん」
 萌がいきなり、ばっさり言った。

「まあ、そうですけど。これはこれで楽しい気がします。僕、すっかりハマってしまってるんです。ダラダラ飲みで一晩中やってます」

 伊藤さんの返事に、萌と私は同時に叫ぶ。
「一晩中?!」
 
「疲れたら音声切って寝たりしてね。で、しばらくして復活って感じですよ。あ、そういや、さとみさんの音声オフ事件あったな」
 伊藤さんは、にやにやして言う。

「何?」尋ねる萌に、「言うてもええ?」と、伊藤さんが山田さんに聞いてから説明し始めた。

 萌は、私からその話を聞いて知っているはずだが、興味深そうに相槌を打ち、時には「あざと!」と、ほほ笑んだりして、伊藤さんの話を聞いている。

 私は内心、はらはらしていた。
 山田さんは失恋したばかりだ。それに、この場にいないさとみが槍玉に挙げられているみたいで、正直いい気はしない。

「まあ、ご縁がなかった、ってことですわね」
 萌の感想は、あっさりしたものだ。

「僕のうぬぼれやった。まだそんなに付き合ってもないのに、一緒に田舎に来てほしい、ってアホやね」
 山田さんも、案外あっさりしている。

「いや、お前が勘違いするのも仕方ないんとちゃう? さとみさんのほうからグイグイ来てたんやし。それに、田舎言うても神戸まですぐやろ。彼女の就職先まで見つけてたんやから、ええ話と思うけどなあ」

 伊藤さんの言葉に、私は「は?」と、口を挟む。
「就職先?」
 どういうこと?

「山田のお父さんは、新聞社のお偉いさんと知り合いで、兵庫のケーブルテレビ局かなんかのアナウンサーの仕事を世話してもいい、言うてたんですよ」

 伊藤さんの言葉に、私の胸の中がゾワゾワする。