オンライン上の私たちは全員、「エッ」という顔になった。
 音声を切っているつもりが、酔っ払って切り忘れているのか?
 それとも、聞こえるように言ったのか?

「おいおい、さとみちゃん。俺らの存在忘れてるよ」
 大橋さんが苦笑いしている。

 画面からさとみが消えているので、私たちはそれ以上ツッこむことができず、なんとなく気まずい空気が漂う羽目になった。
 結局、さとみが帰って来る前に、男性陣は撤収してしまい、私だけがさとみの帰りを待っていた。

「ただいま。あれ? みんなは?」
 酔いも覚めたのか、けろっとした顔つきのさとみに事の次第を説明すると、「私、そんなことしたん?」などと驚いている。

「マイク切ってなかったから、はっきり『山田さん、好きやわー』って、さとみさんの声が聞こえてきました。エコーかかってるんか思うくらい色っぽい声」

「うそ! どうしよう。今度会う(おう)たら、どんな顔したらいい?」

「さあ? 別に普通にしてたら、ええんちゃう?」
 釈然としない思いもあって、私は冷たく言ってしまった。

 その1週間後の土曜の夜、さとみから長文メールが届いた。
 なんでも、あの飲み会の直後、山田さんから交際を申し込まれたらしい。
 もちろん、さとみはOKして、早速二人きりでドライブしてきたところだという。

『そうなん、おめでとう』
 返事を送ると、
『つれないなあ。言うことはそれだけ?』
 と、すぐに返信が来る。

『ほかに何を言うねん。そうや! あの時、マイク音声オフするの忘れてたん? それとも、ここぞとばかりに、切り忘れたフリして愛の告白したん?」

 私は疑問に思っていたことをストレートに聞いてみた。

『そのことは、もう触れんといて。事故です、放送事故! ぴえん』

 何がぴえんやねん。

『なら、そういうことにしとこか。結婚式には呼んでな』

『気が早いわ。結婚なんて、まだまだ。けど結婚するとなったら、もちろん祐華さんはご招待するに決まってるやんか』

『ありがと。友人代表として、二人の馴れ初め(なれそめ)をスピーチさせてもらうわ』