制服から私服に着替えて、私は脱いだ制服をモノプリのエコバッグに詰める。
 そういえば、このエコバッグも、さとみがくれたパリ土産だ。現地で買えば、200円くらいの安物らしい。

 週末は、洗濯の為に制服を持って帰っているのだが、寄り道する用事がない時は、わざわざ着替えるのも面倒で、制服のまま帰宅している。

 しかし、オンライン飲み会やるなら一応着替えたほうがいい。見えるのは上半身といえど、私服に着替えておいたほうがいいだろう。
 幸い、今日の私服はセーターにワイドパンツ。くだけすぎでもなく、気合い入れすぎでもない。

 オンライン飲み会なんて、私にとって魅力的なものじゃないから主催したことはないのだが、さとみは暇さえあれば人を集めてやっているようだ。

 家に帰った私は、念入りにうがい手洗いして、ひとり飲みの準備を始めた。
 メインのおつまみは、冷凍してある有名店のヤンニョムチキン。ここの店のは、皮の部分がカリカリで、甘辛いタレとよく合って、皮の部分だけ集めて食べたいくらい。あとは、スモークチーズとカシューナッツ、それに柿の種くらいか。

 私は結構飲むほうだが、さとみには敵わない。さとみは外見はマカロンみたいに可愛いが、中身は大酒呑みのおっさんである。
 飲み会でも、最後まで全然酔っ払うことなく、明るく機嫌よく “いいお酒” を体現している子だ。

 パソコンの電源を入れ、さとみに教えられたURLに繋ぐ。ほどなく画面に、手を振るさとみが現れた。
「こんばんは。お誘いありがとう」
 私の声かけに、さとみが申し訳なさげに答える。

「急にごめんねえ。今日の参加者を全員知ってるんは、祐華さんくらいしか思いつかんかってん」
「言うても、全員、さとみさんに紹介された人ばっかりやけどな」

 さとみは、いろんな会社のイベントの司会に呼ばれるようなタレントだから、友人知人が私とは桁違いに多い。
 今日参加している大橋さんは、某テレビ局のアナウンサーだし、伊藤さんと山田さんは大手企業のサラリーマンだ。