気づいた時には、何故か身体は溺れていた。既に胸の辺りまで、水に浸かっている。両手も上手く上がらない。

枯れ木や植物が身体に巻き付き、どんどん身動きが取れなくなっていく。

もがけばもがく程、何かに引っかかり傷が増えていった。

「痛い。冷たい」

そんな事を思いながらも、不思議と助けを呼ぶ気にはならなかった。

抵抗を止めたその身体はゆっくりと沈む。ついに、顎の辺りまで水面が迫っていた。体温も、どんどん奪われていく。

冷えて身体の感覚が無くなり、先程の切り傷の痛みなど感じなくなっていた。

この身は、「死」が迫っていた。

その瞬間、遠くから誰かの声が聞こえた気がした。

しかし、既に身体は水中に沈み、目だけがかろうじて光を捉えていた。

「あの声……、誰だったんだろう……」