一週間後、葵は母に誘われて買い物に行った。駅とショッピングモールをつなぐ屋外通路に、人だかりが出来ている。犬の鳴き声が聞こえてきた。
「あっ、そうだ。今日、動物保護団体がデモンストレーションをやっているのよ。新聞で見たわ」
「デモンストレーションって何?」
 事情があって飼えなくなったペットの引き取り手を斡旋する団体があり、ペットを飼う人向けの勉強会や、譲渡会をしているという。そこは、人が集まる場所で定期的に宣伝集会(デモンストレーション)をやっているそうだ。実は、チャミもそういう団体の紹介で、葵の両親が引き取った猫だった。
 葵の足は、自然と人だかりのほうへ引き寄せられる。
 ペットサークルがいくつか置かれ、中には、さまざまな犬や猫がいた。犬は、落ち着きなくウロウロしているが、何匹かいる猫は皆、おとなしく横になって毛づくろいしている。
 その中に、葵の目を惹くキジトラがいた。どことなく、チャミを思い起こさせる。
 いつのまにか後ろに来ていた母の声がする。
「めちゃくちゃ可愛いね!」
「お母さん、この子、チャーちゃんに似てない?」
 母はうなずいて、通行人にビラを配っている中年女性に近づいて行く。