いつもなら、ミルクを飲むと早々に引き上げる子猫は、なぜかその日はずっと、玄関でくつろいでいる。葵はその可愛い姿をしばらく眺めていたが、着替えるために部屋へ戻った。
イヤホンで音楽を聴きながら着替えていた葵は、「ちょっと」と背後から急に肩を叩かれ、驚いてイヤホンを外す。
母がにやにやしながら立っていた。
「びっくりした! なに?」
「ちょっと玄関来て」
玄関に行くと、猫が仰向けに寝ている姿が目に入った。前足を体の脇につけ、行儀よく眠っている姿に葵は吹き出した。
「やだー。何これ」
「ね、人間そのものよね」
二人は顔を見交わして笑う。
「安心しきってる。これってもう、うちの子だね」
葵が冗談ぽく、しかし願望を込めて言ってみたところ、母は目を細めてうなずいた。
母は早速、帰宅した父に、猫を飼うことを提案した。子猫はベビー毛布を敷いてもらい、その上で毛づくろいしている。まるで、ずっと前からここに暮らしているかのような態度に、父は笑って言った。
「いいんじゃない」
そして、雪は葵の家の飼い猫になった。
イヤホンで音楽を聴きながら着替えていた葵は、「ちょっと」と背後から急に肩を叩かれ、驚いてイヤホンを外す。
母がにやにやしながら立っていた。
「びっくりした! なに?」
「ちょっと玄関来て」
玄関に行くと、猫が仰向けに寝ている姿が目に入った。前足を体の脇につけ、行儀よく眠っている姿に葵は吹き出した。
「やだー。何これ」
「ね、人間そのものよね」
二人は顔を見交わして笑う。
「安心しきってる。これってもう、うちの子だね」
葵が冗談ぽく、しかし願望を込めて言ってみたところ、母は目を細めてうなずいた。
母は早速、帰宅した父に、猫を飼うことを提案した。子猫はベビー毛布を敷いてもらい、その上で毛づくろいしている。まるで、ずっと前からここに暮らしているかのような態度に、父は笑って言った。
「いいんじゃない」
そして、雪は葵の家の飼い猫になった。