結局、三人で向かうことになった教室。廊下でも階段でも、すれ違う生徒の視線は隣に並ぶ男に釘付けだ。そんな彼を見上げると、あまりの顔の整い方に感心すらしてしまう。


 「なに?」
 「いや、綺麗な顔してるなぁと思って」
 「……そんなに見られたら恥ずかしいんだけど」
 「あ、ごめん」


 まじまじと見すぎたか。
 思った通りのことを伝えれば、ふいと顔を背けられる。

 顔を見れなくなったのが少し残念だった。けれど、三枝がどんな表情をしているかは分からなくても、その耳が赤く染まっていて、かわいいとも思った。

 三枝の奥で、螺良がニヤニヤと全てを掌握してますみたいな顔をしているのが何故かイラッとしたけど、触れたら負けだと思って何にも言葉はかけなかった。

 そんなこんなでやって来た、二年C組の教室。
 進級した初日ということもあるからか、廊下の時点でなかなかに騒々しかったけれど、多分一番盛り上がっているのがこの教室だ。

 理由は明白、隣に立つこの男が原因だろう。
 自分は関係ないかとさっさと教室に入ってしまって、座席表を確認する。

 窓側から二列目の一番後ろの席。
 見慣れた顔に挨拶しながら席に向かう。
 リュックを開けて荷物を出していれば、隣の席の椅子を引く音がする。

 隣は誰だろうと顔を上げると、綺麗な微笑を浮かべた三枝が隣の席に座ってこちらを見ていた。頬杖をついているのも様になっていて、雑誌から切り取ったみたい。


 「よろしく、お隣さん」
 「うん」


 どうも、とよそよそしく会釈して、荷物の整理に再び取りかかる。壁を作りたいわけじゃないけれど、今まで絡んだことのないタイプだからどう接するのが正解なのか分からない。まだ視線を感じるけど、あえて気づかないふりをした。