「あ、頼も一緒のクラスなんだ」
「より?」
顔が浮かんでこない名前に首を傾げていれば、今度は先程よりも大きな黄色い悲鳴が上がった。何だなんだと振り返れば、注目を一身に集めているにも関わらず、そんな周りのことなんて興味なさげに歩いてくるスラッと高身長の美男子。
――ぱちん。
目と目が合って、「あ、」と思った瞬間、色のなかった彼の瞳が一瞬揺らいだように見えた。
ん? と疑問に思っている間に、すぐにふいと視線を逸らされる。記憶の中を探ると、なんとなく見覚えがあるような気がするけれど、多分、話したことはないだろう。
歓声の中心にいる相手にわざわざ絡もうという気も起こらない。クラスは分かったことだし、さっさと教室に行こうと思ったときだった。
「遅刻もしないで、朝から来るなんて珍しいじゃん」
螺良が一歩前に出て、親しげに話しかけた。
顔の広い螺良のことだ、もしかしたら仲のいい友だちなのかもしれない。
……でもまぁ、俺には関係ないか。
淡白な結論に至った俺は、美男子の方に歩いていく後ろ姿に声をかけた。
「先に教室行ってる」
「え!?」
そもそも、一緒に登校しようなんて約束したわけじゃないし、なんか流れでここまで来ちゃっただけだから。誰かと一緒じゃないと嫌だなんて、そんなのは小学生で卒業したし、ただ教室に行くだけだ。一人で平気。
そう思っていた俺は、すぐに足を止めて振り向いた螺良の表情に目をぱちくりさせた。