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 澄み切った青い空からキラキラと眩い光が降り注ぐ。気持ちがいいほどの快晴。絶好の体育祭日和だ。

 あれから応援旗の制作の手伝いとクラス委員長の仕事が重なり、俺は当日になっても未だに三枝のTシャツに何も描けないでいた。


 「あれ、委員長のTシャツ、何もないじゃん」
 「あー、時間がなくてさ」
 「俺、描こうか?」


 三枝と同じく、俺のも共通デザインのみ。運営用のテントで担当に割り振られた準備をしていると、それを見つけた螺良が気を遣ってマジックを手に取る。けれど、俺は首を横に振った。


 「ありがとう、気持ちだけ貰っておく」
 「そっか、描いてほしくなったらいつでも言って。超力作の俺流アートを完成させるから!」
 「それ聞いたら余計に頼む気無くなったんだけど」
 「えー、委員長ひどい」


 大袈裟に泣き真似をする螺良にケラケラ笑う。綱引きと騎馬戦という出番を終えた俺は、残りの種目がクラス全員参加の大縄だけとなり、大分気が緩んでいた。


 「じゃあ、俺、審判行ってくるから」
 「はーい、行ってらっしゃい」
 「ちゃんとかっこいい審判姿見ててね」
 「早く行きなよ」


 パチンとウインクを決めて借り物競争の審判のために走っていく体育委員にひらひらと手を振る。螺良もめちゃくちゃ浮かれているなぁと、笑みが溢れた。これを女子生徒にはやれないところが螺良のいいところだと思う。サッカー部のエースでファンも多いのに、もったいない。


 「ねぇ、次、頼の番じゃない?」
 「ほんとだ。さすがに手止めちゃうね」
 「何のお題引くかなぁ」


 螺良の審判姿を見ることなく作業を進めていれば、他のクラスの女子の話している声がたまたま耳に入る。いつも女子の話題の中心にいるなぁと、グラウンドを見れば確かに三枝がスタートラインに立っていた。

 容赦ない太陽の下にずっといればじんわりと汗が滲むはずなのに、涼やかな表情をした三枝は一人だけ別格に爽やかだ。

 去年は体育祭も真面目に参加していなかったから、こうして全校生徒が集まる場に出てきてちゃんと競技に参加しているのが奇跡のようだ。「本当に生まれ変わったんだなぁ」と、隣のテントで去年の三枝の担任が涙を浮かべている。噂のイケメンを一目見ようと校内だけでなく、観覧席からも視線が集まっている気がした。

 三枝がこの場にいる全員の視線を集める中、螺良がスタートの合図を出す。ピストルの音と共に、一斉に走り出した六人。一番にお題の書かれた紙が入っているボックスに手を突っ込んだ三枝は、中を確認して驚いたように見えた。