四月最初の登校日、それ即ちクラス発表の日。

 一年通って、すっかり乗り慣れた電車の中で英単語帳を開く。たまたま空いた席に座ることができて、今日はラッキーだ。

 高校二年生に進級した俺は、今日の重大イベントであるクラス発表に少しだけドキドキしていた。そのせいか、気が散ってしまってあんまり単語が頭に入ってこない。さっきから、同じところばかり繰り返し目で追っている。

 誰と一緒がいい、とか。
 あの人と同じクラスになりたくない、とか。
 そういうのは一切ないけれど、ただ普通に過ごせるクラスならいいなぁと思う。

 英単語そっちのけでそんなことを考えていると、車内アナウンスで、次が学校の最寄り駅だということを知らされる。結局、二十分間で一ページも進まなかった英単語帳をそそくさとリュックにしまった。

 同じ制服を着た生徒が数人、グループになって前を歩くのを追いかけながら、俺は一人でのろのろと学校へと続く一本道を歩いていた。

 学校が近づいてくると、自転車派やバス派、徒歩派も合流してどんどん登校している生徒の数が増えていく。


 「あ、委員長だ、おはよう!」
 「おはよ」


 学校の目の前にある交差点で信号待ちをしていれば、一年生の頃に同じクラスだった螺良(つぶら)が声をかけてくる。サッカー部のエースとして有名だが、今日は部活の朝練がなかったらしい。

 周りを取り囲んでいるメンバーも、きっとサッカー部の仲間なのだろう。圧倒的陽キャ集団のオーラが朝日のように眩しくて、目に染みる。