無意識だ。
聡が気まずそうに答えるくらいだから嘘ではないはず。でも、だとしたら、どうしようもないだろ。
「聡、好きだ。……たぶん、この気持ちは消えない」
いま恋愛を切り捨てたとしても、俺はきっとまた聡に惹かれる。何度も、何度も。
「お前の好きとは違うけど、」
俺の想いはここで途絶えた。ボイスチャットがぶつりと切れ、畳みかけるように、画面の右下に聡のログアウト表示が出る。
「ずっと一緒にいれたらいいなって、思ってる」
無意味な足掻きを終えるとヘッドセットを外し、天井を仰ぐ。
つい数時間前、聡の想いを優先しようと決めた俺はどこへいったのか。
――――また怒らせたよな。
ふーっと深く息を吐いて目を閉じる。
瞼の裏で、聡が睨みつけてくる。会話中は顔なんて見えていなかったのに、その表情はまるで――
言い知れない悔しさと葛藤していた最中、バンっ!と自室のドアが音を立てて開いた。突然現れた聡は一転して丁寧にドアを閉め、躊躇いがちに振り返る。
ほんの一瞬、泣いているのかと見間違った。
「もう無理! だってさ、耳元で臣の声が。しかも……とにかく無理ッ!」
えっと……。
俺があ然としている間も、何か言え、と聡が目で訴えてくる。自分よりも混乱しているやつを見ていると、冷静になるというか、段々と面白くなってきた。
「とりあえず外行くか?」
渋々と頷いた聡と一緒に部屋を出る。
今日は会えないと思っていた聡が、見慣れた白いスウェット姿で半歩ほど後ろをついてくる。どうやらまだ、ギリギリ見限られてはいないらしい。
この時間を大事にしたいと思うと、自然と足取りは緩やかになった。
とぼとぼ歩く聡を視界の端に捉えつつ、付かず離れずの距離を保つ。
友情か、恋か。そのどちらかを選ぶよりもしっくりくる表現が、ひとつある。
――聡は特別。
他の誰より、聡は特別な存在だ。
「……まじで最悪だよ。これでもう一緒にゲームもできない」
ぼそりと聡から零れた愚痴が、街灯を反射して光るアスファルトへ落ちる。
「聞こえてくるんだよ、臣の息遣いとかさ。耳元で」
そうだな、と内心頷く。なにか言葉を返すより、受け止めるべきだと思った。
「なんで臣は平気なんだよ」
「え……? あー、家を奇襲するほどお前にエロさは感じない」
「はあぁぁ? じゃあなんでキスなんてすんだよ」
勢い余って口走ってしまったのだろう。不機嫌さ丸出しでこちらを見上げた聡は、目が合った瞬間、またすぐに顔を背けた。
「あのときは、愛おしいなって思った」
包み隠さず答えると、聡が一段と俯く。
聡は黙ったまま、それでもひとりで帰ろうとはしない。
宛もなく出てきてしまった俺は、ひとまず近くの公園へ入った。
街灯の足元にあるベンチを素通りしてブランコへ座ると、聡も隣のブランコに腰を下ろす。互いが揃って手を伸ばさないと届かない、俺たちに適した距離だ。
じっとしていると夜風が少し肌寒い。良くも、悪くも。
聡が気まずそうに答えるくらいだから嘘ではないはず。でも、だとしたら、どうしようもないだろ。
「聡、好きだ。……たぶん、この気持ちは消えない」
いま恋愛を切り捨てたとしても、俺はきっとまた聡に惹かれる。何度も、何度も。
「お前の好きとは違うけど、」
俺の想いはここで途絶えた。ボイスチャットがぶつりと切れ、畳みかけるように、画面の右下に聡のログアウト表示が出る。
「ずっと一緒にいれたらいいなって、思ってる」
無意味な足掻きを終えるとヘッドセットを外し、天井を仰ぐ。
つい数時間前、聡の想いを優先しようと決めた俺はどこへいったのか。
――――また怒らせたよな。
ふーっと深く息を吐いて目を閉じる。
瞼の裏で、聡が睨みつけてくる。会話中は顔なんて見えていなかったのに、その表情はまるで――
言い知れない悔しさと葛藤していた最中、バンっ!と自室のドアが音を立てて開いた。突然現れた聡は一転して丁寧にドアを閉め、躊躇いがちに振り返る。
ほんの一瞬、泣いているのかと見間違った。
「もう無理! だってさ、耳元で臣の声が。しかも……とにかく無理ッ!」
えっと……。
俺があ然としている間も、何か言え、と聡が目で訴えてくる。自分よりも混乱しているやつを見ていると、冷静になるというか、段々と面白くなってきた。
「とりあえず外行くか?」
渋々と頷いた聡と一緒に部屋を出る。
今日は会えないと思っていた聡が、見慣れた白いスウェット姿で半歩ほど後ろをついてくる。どうやらまだ、ギリギリ見限られてはいないらしい。
この時間を大事にしたいと思うと、自然と足取りは緩やかになった。
とぼとぼ歩く聡を視界の端に捉えつつ、付かず離れずの距離を保つ。
友情か、恋か。そのどちらかを選ぶよりもしっくりくる表現が、ひとつある。
――聡は特別。
他の誰より、聡は特別な存在だ。
「……まじで最悪だよ。これでもう一緒にゲームもできない」
ぼそりと聡から零れた愚痴が、街灯を反射して光るアスファルトへ落ちる。
「聞こえてくるんだよ、臣の息遣いとかさ。耳元で」
そうだな、と内心頷く。なにか言葉を返すより、受け止めるべきだと思った。
「なんで臣は平気なんだよ」
「え……? あー、家を奇襲するほどお前にエロさは感じない」
「はあぁぁ? じゃあなんでキスなんてすんだよ」
勢い余って口走ってしまったのだろう。不機嫌さ丸出しでこちらを見上げた聡は、目が合った瞬間、またすぐに顔を背けた。
「あのときは、愛おしいなって思った」
包み隠さず答えると、聡が一段と俯く。
聡は黙ったまま、それでもひとりで帰ろうとはしない。
宛もなく出てきてしまった俺は、ひとまず近くの公園へ入った。
街灯の足元にあるベンチを素通りしてブランコへ座ると、聡も隣のブランコに腰を下ろす。互いが揃って手を伸ばさないと届かない、俺たちに適した距離だ。
じっとしていると夜風が少し肌寒い。良くも、悪くも。