「はぁぁぁ」
「後ろでため息やめろ。なんなんだよ、まじで」
「…………」

ぜんぶ臣のせいじゃん、とは言えず、不満たっぷりに唇を尖らせる。

昨日よりももっと、臣のことがわからない。

今日1日で、恋人になってもいいことはないと身を持って知った。別れるどうこうの話じゃない。行くぞ!と手を引くことも、おんぶされることにも神経をすり減らして、どんどん不自由になるだけだ。

腐れ縁だと言えるほど気楽な関係だからこそ、ずっと一緒にいたいと思えるのに。なのに、なんで――?

臣の表情を確かめたくなり、頭を傾ける。その気配に気づいたのか、臣がいきなり顔を振ったことで、オレはビクッと仰け反ってしまった。

「おわっ! ……ぶねぇ」

ひょい、とオレの身体を浮かせて臣が体勢を整える。

「暴れんな」
「ご、ごめん」
「こっちもギリギリなんだよ、お前の心臓の音うるせぇし」

――――くそっ。

眼の前にある黒い頭に向かって、ゴンッ、と自分の額をぶつける。

「いてぇ」
「意識させるような発言すんな!」

額の痛みより、顔が熱い。

いまだけは背負われててよかった。もし隣を歩いていたら、変な勘違いをさせかねない。それだけは困る。