「先輩、私が連れて行った合コンでゲットしたって偉そうに言ってた原さんて婚約してたんですか? 寝とったの? 最低! キモイ。真希ちゃんが可哀想」
間宮夏帆がいつにない悲痛な表情で私を非難してくる。
(何? 1日で築いたような安っぽい友情を見せつけて来て気持ち悪いわ)
「すみません、せっかく雇ってもらったけれど私は此処では働けません」
バイトの山田真希は顔を隠したまま、外に出ていった。
騒然とした空気の中、このまま宴会を続けようという雰囲気ではない。
「妻から電話なんで、俺も失礼します」
英樹まで出ていくと、皆が私を世界の敵のように睨んできた。
「何なんですか? 皆、今日会ったばかりの山田真希派なの? 意味わかんない」
私はとてもそこにいられる状況ではなくて、その場を離れた。
「山田真希 !あんたさ! わざとうちの職場きたでしょ。そこまでして私を貶めたいの? どうせスペイン行くし、仕事辞めるつもりだから痛くも痒くもないんだけど」
「そうですか、それは良かったですね。ほら、あなたの不倫相手が追いかけてきましたよ」
山田真希の指を刺す方向を見ると、英樹が必死の顔で私を追いかけてきた。
「やばい、嫁にバレた」
「私は関係ないよ。だって、もう関係は清算したじゃん」
英樹は今更、何を言っているのだろうか。
私はもう裕司と結婚することに向かっていて、英樹との関係はとっくに終わっている。
「それはあなたの都合でしょ。清算? あんたみたいなクソビッチは、誘われればすぐに股開くだろうが!」
今まで大人しそうに見えていた山田真希の強烈な言葉に私は言葉を失った。
「裕司との子も妊娠してませんでしたよね。子供を交渉材料に使うなんて、どれだけクズなんですか? あなたには死んでもらいます」
山田真希の言葉にゾッとした。
(死んでもらうってどう言うこと?)
そして、彼女はなぜ私が本当は妊娠していないことに気がついているのだろう。
私と英樹の不倫関係にも気づいていたし、彼女は多分関わってはいけないヤバイ女だ。
でも、彼女は新卒で仕事辞めて婚約破棄されている虚しい女。
私は10歳も年下の若い子に勝って、一発逆転して勝ち組になった女だ。
「何? 裕司が自分ではなく10歳も年上の私を選んだのが腹立たしくて復讐しているの? 山田真希さんだっけ。裕司の婚約者の名前なんて今知ったわ。あんたの話なんて裕司との間で出て来たこともないから。若いから手を出されただけで、本気になっちゃった? それで逆恨みって良い迷惑だわ」
私の言葉に突然、山田真希が一筋の涙を流した。
彼女の視線の先を見ると、私の後ろあたりを見ていた。
振り返ったら、そこに裕司がいた。
「裕司が私を捨てても、一緒になりたかった人はこんな人なんだね」
山田真希がポロポロと涙が流し出す。
こんな涙見たら男は抱きしめるだろうと思うくらいあざとい涙だ。
「いや、違う。俺が好きなのは真希だけで⋯⋯本当にごめん」
裕司の瞳には山田真希しか映ってなかった。
私は彼の恋路を邪魔した脇役みたいな扱いだ。
婚約して今日は彼の家まで挨拶まで行ってやったのに酷いもんだ。
「どうして此処にきたの?」
山田真希が涙を流しながら、裕司に絞り出すように伝えている。
ドラマのヒロインのような彼女の姿に、私は苛立った。
「位置情報共有アプリが、入れたままになってた。真希に会いたくて家に行ったけど、他の家族が家にいてびっくりしたよ。本当にごめん。俺が全部悪い。真希のこと、こんなに苦しめてたんだな」
裕司が愛おしそうに山田真希を見つめるのを見て寒気がした。
(なんだこのメロドラマ)
私は裕司の婚約者で、こんな舞台装置扱いされる覚えはない。
「美由紀、嫁にバレて今からお前連れて来いって。行くぞ! とにかく、俺とは関係ないただの同僚で、嫁の誤解だということで通してくれ」
英樹は私の横で自分の行く末しか考えていないようで、私を妻の元に連行しようとしている。
「いや、こっちこそ関係ないから。とっくに終わってるのに、なんで私が行かなきゃいけないの?」
「丸川美由紀さん、分かりませんか? 散々人の家庭を壊すようなことをして勝手に終わったとか言うべきではないですよ。あなたは子から父を奪い、妻から夫を奪い、私から代わりのきかない人を奪った人ですから。きっと恋など2度とできない未来があるでしょう」
10歳も年下の今日が初対面の山田真希が偉そうに諭してくる言葉に腹が立った。
しかし、私は必死の形相で私を引きずってタクシーに乗せる英樹のされるがままになった。
(もう、英樹とは終わって、私はネクストステージに立っているんだけどな)
この時の私は何もわかっていなかった。
この後、英樹の奥さんから私は多額の慰謝料を請求された。
「銀行の方にも不倫の件で、ご相談に伺いますから」
奥さんのその言葉を聞いて、もう職場に行きたくなくなったので仕事は翌日からバックれた。
裕司と結婚すれば慰謝料の支払いも困ることはないと思ってたのに婚約は破棄された。
婚約破棄の慰謝料を裕司に要求しようとしたら、詐欺罪で訴えると脅されたのでやめた。
裕司との結婚は同居や介護がついて来そうだから、別に美味しいものではなかったと自分自身を納得させて諦めた。
10年以上銀行の窓口勤務の経験があるから、次の職などどうにでもなると思っていた。
しかし、全国展開しているササキ食品はグループの子会社を含めると日本中の銀行と取引があった。
英樹は風俗に行くくらい性欲モンスターでたくさんの浮気相手がいたのに、一番の妻の恨みは私に向かった。
ブラックリストでも作成されているのか、就職活動はどこに行ってもうまく行かなかった。
収入もないのに、多額の慰謝料を背負い私は全てを失った。
未来が見えず日々生きることに精一杯で、恋愛などする気も失せた。
私を生き遅れと影で笑ってた間宮夏帆を商社マンとの結婚で見返したかった。
でも、今は他人からどう思われてようとどうでも良い。
ただ、もう山田真希と関わらない余生を生きていきたい。
間宮夏帆がいつにない悲痛な表情で私を非難してくる。
(何? 1日で築いたような安っぽい友情を見せつけて来て気持ち悪いわ)
「すみません、せっかく雇ってもらったけれど私は此処では働けません」
バイトの山田真希は顔を隠したまま、外に出ていった。
騒然とした空気の中、このまま宴会を続けようという雰囲気ではない。
「妻から電話なんで、俺も失礼します」
英樹まで出ていくと、皆が私を世界の敵のように睨んできた。
「何なんですか? 皆、今日会ったばかりの山田真希派なの? 意味わかんない」
私はとてもそこにいられる状況ではなくて、その場を離れた。
「山田真希 !あんたさ! わざとうちの職場きたでしょ。そこまでして私を貶めたいの? どうせスペイン行くし、仕事辞めるつもりだから痛くも痒くもないんだけど」
「そうですか、それは良かったですね。ほら、あなたの不倫相手が追いかけてきましたよ」
山田真希の指を刺す方向を見ると、英樹が必死の顔で私を追いかけてきた。
「やばい、嫁にバレた」
「私は関係ないよ。だって、もう関係は清算したじゃん」
英樹は今更、何を言っているのだろうか。
私はもう裕司と結婚することに向かっていて、英樹との関係はとっくに終わっている。
「それはあなたの都合でしょ。清算? あんたみたいなクソビッチは、誘われればすぐに股開くだろうが!」
今まで大人しそうに見えていた山田真希の強烈な言葉に私は言葉を失った。
「裕司との子も妊娠してませんでしたよね。子供を交渉材料に使うなんて、どれだけクズなんですか? あなたには死んでもらいます」
山田真希の言葉にゾッとした。
(死んでもらうってどう言うこと?)
そして、彼女はなぜ私が本当は妊娠していないことに気がついているのだろう。
私と英樹の不倫関係にも気づいていたし、彼女は多分関わってはいけないヤバイ女だ。
でも、彼女は新卒で仕事辞めて婚約破棄されている虚しい女。
私は10歳も年下の若い子に勝って、一発逆転して勝ち組になった女だ。
「何? 裕司が自分ではなく10歳も年上の私を選んだのが腹立たしくて復讐しているの? 山田真希さんだっけ。裕司の婚約者の名前なんて今知ったわ。あんたの話なんて裕司との間で出て来たこともないから。若いから手を出されただけで、本気になっちゃった? それで逆恨みって良い迷惑だわ」
私の言葉に突然、山田真希が一筋の涙を流した。
彼女の視線の先を見ると、私の後ろあたりを見ていた。
振り返ったら、そこに裕司がいた。
「裕司が私を捨てても、一緒になりたかった人はこんな人なんだね」
山田真希がポロポロと涙が流し出す。
こんな涙見たら男は抱きしめるだろうと思うくらいあざとい涙だ。
「いや、違う。俺が好きなのは真希だけで⋯⋯本当にごめん」
裕司の瞳には山田真希しか映ってなかった。
私は彼の恋路を邪魔した脇役みたいな扱いだ。
婚約して今日は彼の家まで挨拶まで行ってやったのに酷いもんだ。
「どうして此処にきたの?」
山田真希が涙を流しながら、裕司に絞り出すように伝えている。
ドラマのヒロインのような彼女の姿に、私は苛立った。
「位置情報共有アプリが、入れたままになってた。真希に会いたくて家に行ったけど、他の家族が家にいてびっくりしたよ。本当にごめん。俺が全部悪い。真希のこと、こんなに苦しめてたんだな」
裕司が愛おしそうに山田真希を見つめるのを見て寒気がした。
(なんだこのメロドラマ)
私は裕司の婚約者で、こんな舞台装置扱いされる覚えはない。
「美由紀、嫁にバレて今からお前連れて来いって。行くぞ! とにかく、俺とは関係ないただの同僚で、嫁の誤解だということで通してくれ」
英樹は私の横で自分の行く末しか考えていないようで、私を妻の元に連行しようとしている。
「いや、こっちこそ関係ないから。とっくに終わってるのに、なんで私が行かなきゃいけないの?」
「丸川美由紀さん、分かりませんか? 散々人の家庭を壊すようなことをして勝手に終わったとか言うべきではないですよ。あなたは子から父を奪い、妻から夫を奪い、私から代わりのきかない人を奪った人ですから。きっと恋など2度とできない未来があるでしょう」
10歳も年下の今日が初対面の山田真希が偉そうに諭してくる言葉に腹が立った。
しかし、私は必死の形相で私を引きずってタクシーに乗せる英樹のされるがままになった。
(もう、英樹とは終わって、私はネクストステージに立っているんだけどな)
この時の私は何もわかっていなかった。
この後、英樹の奥さんから私は多額の慰謝料を請求された。
「銀行の方にも不倫の件で、ご相談に伺いますから」
奥さんのその言葉を聞いて、もう職場に行きたくなくなったので仕事は翌日からバックれた。
裕司と結婚すれば慰謝料の支払いも困ることはないと思ってたのに婚約は破棄された。
婚約破棄の慰謝料を裕司に要求しようとしたら、詐欺罪で訴えると脅されたのでやめた。
裕司との結婚は同居や介護がついて来そうだから、別に美味しいものではなかったと自分自身を納得させて諦めた。
10年以上銀行の窓口勤務の経験があるから、次の職などどうにでもなると思っていた。
しかし、全国展開しているササキ食品はグループの子会社を含めると日本中の銀行と取引があった。
英樹は風俗に行くくらい性欲モンスターでたくさんの浮気相手がいたのに、一番の妻の恨みは私に向かった。
ブラックリストでも作成されているのか、就職活動はどこに行ってもうまく行かなかった。
収入もないのに、多額の慰謝料を背負い私は全てを失った。
未来が見えず日々生きることに精一杯で、恋愛などする気も失せた。
私を生き遅れと影で笑ってた間宮夏帆を商社マンとの結婚で見返したかった。
でも、今は他人からどう思われてようとどうでも良い。
ただ、もう山田真希と関わらない余生を生きていきたい。