送迎車に乗り込み、見送られながら私たちは笹沼邸を出た。
「緋色、今まで1人で頑張ったね」
私は彼がどれだけ悲しみを抱えながら、慣れない子育てを頑張ったか思いを巡らせていた。
私が彼に抱きつくと、彼も私を抱き返して頭を撫でてくる。
その時、車内のテレビに速報が流れた。
「陽子が捕まった⋯⋯」
緊急ニュースで、保釈期間中の小笠原陽子が傷害事件を起こしたことが伝えられた。
(陽子がやっと捕まった⋯⋯蓮さんは大丈夫かしら?)
私は、昨日やっと壁に手をついて立てるようになっていた彼を思い出して心配になった。
その上、これは彼が逆らえないと言っていた父親の意に反する行動だ。
「森田蓮は大丈夫だよ。日陰、少しは肩の力を抜いたらどうだ。君には君を必死で守ろうとする人たちがいるのだから」
私はふと勇のことが思い浮かんだ。
そして、蓮さんの今回の行動も、私の安全を守るためだ。
緋色も私のせいで、しなくて良い苦労をしている。
「私は何を返せば⋯⋯」
「美しいウェディングドレス姿を見せてくれ。幸せそうな君を見れば、何だってできるんだから」
緋色は1週間後にはマスコミを呼んで盛大に結婚式をすると言っていた。
小笠原家を完全にシャットアウトするという。
私は私の育ての父である望月健太とバージンロードを歩く予定だ。
♢♢♢
今日は私と緋色の結婚式だ。
ホテルのウェディングプロモーションと称してマスコミを沢山呼んでいる。
今、控え室には笹沼夫妻が、ひなたを連れて挨拶に来てくれている。
「じいじとばあば、ママ本当に綺麗でしょ」
「ふふ、本当に綺麗ね」
「ありがとうございます」
ひなたはすっかり笹沼夫妻になれたようだった。
会えなかった時があっても、祖父母と孫の関係を持てたようで嬉しく思う。
ノックと共に、緋色が入ってきた。
「パパー! 」
ひなたが嬉しそうに抱きつくのを緋色が受け止める。
「笹沼社長、今日、結婚式と同時進行で森田蓮が森田食品を内部告発します。その打ち合わせ宜しいですか?」
「分かった」
「日陰、閉じ込めてしまいたいくらい綺麗だ。けど、君のその姿をどうしても見たい人と今繋がってる⋯⋯」
緋色が耳元で囁きながら、タブレットを渡してきた
「じゃあ、ひなた、私たちもいきましょうか」
笹沼夫妻がひなたを連れて控え室を出て行った。
「誰だろ⋯⋯」
タブレット端末を開けると、そこには私が10年以上付き合った勇がいた。
「勇? 実は私のウェディングドレス姿を見たかったの?」
「当たり前じゃん。すごい似合ってるな。プリンセスラインのドレス? ちょっと、くるっと一周してみて」
私は彼に言われた通り、くるりとそこで一回転した。
失恋した私に親友のように寄り添ってくれて、彼と私の付き合いは始まった。
彼に裏切られたと思い怒りが込み上げた日もあったが、彼は私のために動いてくれたと言うことだ。
(もしかして式を挙げたくないないって言ったのも、陽子を下手に刺激しないため?)
「勇、ちゃんとご飯食べてる? 沐浴はしたりしてるの?」
いつも私のことを心配してくれている彼を私は信用していた。
そして未だ日本に一時帰国さえ危険でできない彼のことが私は心配で仕方がない。
「日陰⋯⋯インドだからってガンジス川で沐浴してると思ってる? ちゃんと大きい浴槽のある家を白川社長は用意してくれているよ」
勇が吹き出しそうになりながら話している。
きっと私は彼と付き合っている間、自分でも知らないところで彼に守られていた。
「私が勇のためにできることってある?」
「幸せになること⋯⋯日陰の幸せが俺の幸せなの。あと、これはアドバイスだけど、あまり他の男の話を白川社長の前でしない方が良いかも。あの方、ああ見えて実は独占欲が半端ないと思うんだよね」
久しぶりに私にアドバイスしてくる勇に懐かしい気持ちになった。
陽子との会話は録音することや、CAになることを助言してくれたのも彼だ。
(いつも、私のこと考えてくれてたんだね⋯⋯)
「緋色の独占欲が強いことなんて、もう嫌ってほど知ってるよ!」
勇が私にいつも遠慮がちに触れてきたのとは全く違う。
緋色は私の全てを独占したいように触れてきて、私はいつも彼に奪われるような感覚になっている。
「次に会えたら、白川一家の幸せな話を沢山聞かせてくれ。ハッピーウェディング、日陰!」
「うん、またね。勇⋯⋯」
勇が画面越しに私に手を振るので、私も振り返した。
「日陰! 森田君もウェディングドレス姿を見せろとうるさいから連れてきた」
気がついたら、後ろに緋色と蓮さんがいた。
蓮さんは、私たちの式には列席せず会見場に向かうらしい。
彼の父親に露見すると潰されてしまうので、全てのことを秘密裏に進めてきた。
結婚式と同時に記者会見を行うことは蓮さんの提案だ。
「日陰さん、そんな顔しないで。俺は全ての女性に優しい森田蓮だから。世界一美しい日陰さんの笑顔が見たいな」
私は心配な気持ちが表に出ていたようで、反省してなんとか笑顔を作った。
「緋色、今まで1人で頑張ったね」
私は彼がどれだけ悲しみを抱えながら、慣れない子育てを頑張ったか思いを巡らせていた。
私が彼に抱きつくと、彼も私を抱き返して頭を撫でてくる。
その時、車内のテレビに速報が流れた。
「陽子が捕まった⋯⋯」
緊急ニュースで、保釈期間中の小笠原陽子が傷害事件を起こしたことが伝えられた。
(陽子がやっと捕まった⋯⋯蓮さんは大丈夫かしら?)
私は、昨日やっと壁に手をついて立てるようになっていた彼を思い出して心配になった。
その上、これは彼が逆らえないと言っていた父親の意に反する行動だ。
「森田蓮は大丈夫だよ。日陰、少しは肩の力を抜いたらどうだ。君には君を必死で守ろうとする人たちがいるのだから」
私はふと勇のことが思い浮かんだ。
そして、蓮さんの今回の行動も、私の安全を守るためだ。
緋色も私のせいで、しなくて良い苦労をしている。
「私は何を返せば⋯⋯」
「美しいウェディングドレス姿を見せてくれ。幸せそうな君を見れば、何だってできるんだから」
緋色は1週間後にはマスコミを呼んで盛大に結婚式をすると言っていた。
小笠原家を完全にシャットアウトするという。
私は私の育ての父である望月健太とバージンロードを歩く予定だ。
♢♢♢
今日は私と緋色の結婚式だ。
ホテルのウェディングプロモーションと称してマスコミを沢山呼んでいる。
今、控え室には笹沼夫妻が、ひなたを連れて挨拶に来てくれている。
「じいじとばあば、ママ本当に綺麗でしょ」
「ふふ、本当に綺麗ね」
「ありがとうございます」
ひなたはすっかり笹沼夫妻になれたようだった。
会えなかった時があっても、祖父母と孫の関係を持てたようで嬉しく思う。
ノックと共に、緋色が入ってきた。
「パパー! 」
ひなたが嬉しそうに抱きつくのを緋色が受け止める。
「笹沼社長、今日、結婚式と同時進行で森田蓮が森田食品を内部告発します。その打ち合わせ宜しいですか?」
「分かった」
「日陰、閉じ込めてしまいたいくらい綺麗だ。けど、君のその姿をどうしても見たい人と今繋がってる⋯⋯」
緋色が耳元で囁きながら、タブレットを渡してきた
「じゃあ、ひなた、私たちもいきましょうか」
笹沼夫妻がひなたを連れて控え室を出て行った。
「誰だろ⋯⋯」
タブレット端末を開けると、そこには私が10年以上付き合った勇がいた。
「勇? 実は私のウェディングドレス姿を見たかったの?」
「当たり前じゃん。すごい似合ってるな。プリンセスラインのドレス? ちょっと、くるっと一周してみて」
私は彼に言われた通り、くるりとそこで一回転した。
失恋した私に親友のように寄り添ってくれて、彼と私の付き合いは始まった。
彼に裏切られたと思い怒りが込み上げた日もあったが、彼は私のために動いてくれたと言うことだ。
(もしかして式を挙げたくないないって言ったのも、陽子を下手に刺激しないため?)
「勇、ちゃんとご飯食べてる? 沐浴はしたりしてるの?」
いつも私のことを心配してくれている彼を私は信用していた。
そして未だ日本に一時帰国さえ危険でできない彼のことが私は心配で仕方がない。
「日陰⋯⋯インドだからってガンジス川で沐浴してると思ってる? ちゃんと大きい浴槽のある家を白川社長は用意してくれているよ」
勇が吹き出しそうになりながら話している。
きっと私は彼と付き合っている間、自分でも知らないところで彼に守られていた。
「私が勇のためにできることってある?」
「幸せになること⋯⋯日陰の幸せが俺の幸せなの。あと、これはアドバイスだけど、あまり他の男の話を白川社長の前でしない方が良いかも。あの方、ああ見えて実は独占欲が半端ないと思うんだよね」
久しぶりに私にアドバイスしてくる勇に懐かしい気持ちになった。
陽子との会話は録音することや、CAになることを助言してくれたのも彼だ。
(いつも、私のこと考えてくれてたんだね⋯⋯)
「緋色の独占欲が強いことなんて、もう嫌ってほど知ってるよ!」
勇が私にいつも遠慮がちに触れてきたのとは全く違う。
緋色は私の全てを独占したいように触れてきて、私はいつも彼に奪われるような感覚になっている。
「次に会えたら、白川一家の幸せな話を沢山聞かせてくれ。ハッピーウェディング、日陰!」
「うん、またね。勇⋯⋯」
勇が画面越しに私に手を振るので、私も振り返した。
「日陰! 森田君もウェディングドレス姿を見せろとうるさいから連れてきた」
気がついたら、後ろに緋色と蓮さんがいた。
蓮さんは、私たちの式には列席せず会見場に向かうらしい。
彼の父親に露見すると潰されてしまうので、全てのことを秘密裏に進めてきた。
結婚式と同時に記者会見を行うことは蓮さんの提案だ。
「日陰さん、そんな顔しないで。俺は全ての女性に優しい森田蓮だから。世界一美しい日陰さんの笑顔が見たいな」
私は心配な気持ちが表に出ていたようで、反省してなんとか笑顔を作った。