五十鈴五花は、異常な少女である。
その事は、付き合い始めてしばらくしてからようやく分かってきた。
付き合い始めた当初、僕は彼女と学校にいる間は恋人らしい事が出来ないので、積極的に自宅に彼女を呼んで、イチャイチャしようとした。
彼女は気まぐれな猫のような性格をしていて、最初はまったく理由もなく断る事が多かった。
そのたびに、僕はもっと彼女に好かれなければと、大変に焦りを覚えるのだった。
だが、ついに彼女を自宅に誘う事が出来た時――
僕は、ただただ煮えたぎったマグマのような性欲を、彼女に弄ばれるがままになっていた――
「ねぇ、たっくん。ほらほら、手が止まってますよ? 今日は一緒に勉強するんですよね? せっかくわたしが手取り足取り教えてるんですから、ちゃんとやらないとですよ……!」
僕が自室のこたつに座って教科書とノートを広げて勉強している中――
五花は、僕の背後に座り、僕は彼女に抱きかかえられるような恰好で、勉強する事を強いられていた。
僕のTシャツ一枚になった背中には、ブラウスの奥からでも激しく存在感を主張する彼女の胸がぴったりと押し当てられて、むにゅむにゅとした柔らかさを伝えてきていた。
その感触を味わい続けていると、僕は自分の興奮が際限なく高まっていくのを感じた。
そして、五花は足癖も悪かった。
五花はその短いスカートから伸びた瑞々しい太ももを、僕の脚の上に置いて、時々、その足先で、僕のふとももや股間をくすぐるようにするのだ。
それはもはや完全に性的な接触といっていいレベルに達していると僕は思った。
僕は、そうされるたびに、今すぐこの野獣のような欲望を解き放ちたくてたまらなかった。
だが、ダメなのだ。
僕は彼女と、「彼女に何をされても、彼女に無理やりエッチな事をしない」と約束してしまっていた。
それは、言い換えれば、五花は僕をいくら弄んでも、僕に襲われるリスクが無い事を意味していた。
僕は実際に体験して初めて、その約束の本当の恐ろしさをまざまざと味わっていた。
五花は、そもそも頭のいい天才肌の少女だったが、こと性的な事柄についても天才と言って差し支えなかっただろう。
五花は常に絶妙なタイミングで僕の性欲を刺激し、ムラムラが止まらなくなったタイミングで無慈悲にも勉強に話を移し、僕が普段なら簡単に解ける数学の問題すら、悪戦苦闘しているのを見て、
「たっくんはダメダメですねぇ。やっぱりわたしがもっと面倒みてあげないとダメですね? ほら、ちょっと息抜きしましょうか。わたしの太ももに頭を置いて寝ころんでくださいよ? 膝枕してあげます。えへへ、なんだか恋人っぽいですね!」
などと、またしても僕の煩悩を刺激しにかかるのだ。
色々と言いたい事はあったが、僕は結局五花に抗う気力もなく、ただただ言われるがままに膝枕を享受する。
膝枕されている間、頭で味わう彼女のぷにぷにとした柔らかい肉の感触と、目の前に広がった乱れた短いスカートに、面積の大きな肌色のふともも、その下から覗く桃色の下着のコンビネーションで、僕はもう本当に、これ以上は我慢できないという境地にまで至ってしまった。
とにもかくにも、性欲を発散したい。
そうしないと、僕は本当にこの大切な彼女を襲ってしまう。
そう思った僕は、「ちょ、ちょっとトイレ……」といって席を立とうとする。
「……一人でエッチな事しちゃうんですか?」
だが返ってきた彼女の言葉は、思った以上に直接的に、僕の行動を咎めるものだった。
「……ねぇたっくん、彼女と勉強してて、エッチな事が我慢できなくて一人エッチしちゃうのは、ちょっと男として格好悪すぎじゃないですか? オタク君ってそういう人の事を言うんですかね? わたし、自分の彼氏が、そういう格好悪い人なんだとは、思いたくないんですけど……」
僕は、自分の情けない行動を馬鹿にされ、オタクである事も馬鹿にされたと思い、自分が情けなくてたまらなくなった。
「大丈夫ですよ、たっくん。わたしがちゃんと勉強できるように、サポートしてあげますから♪ ほら、トイレなんて嘘言ってないで、こっち座ってくださいよ♪ 彼女が密着して勉強教えてくれるなんて、滅多にない機会ですよ? それも成績優秀万能美少女の五花ちゃんが教えてくれるんですから♪」
五花は情けない僕を見てどんどん機嫌を良くしているようで、楽しそうな口調と表情で僕を再び勉強机に座らせようとする。
僕に、逆らう手立てはなかった。
気分は、処刑台に向かう囚人だったが――
それに抵抗する方策は、もはや一切残されていなかった。
それからも、僕は散々弄ばれて、からかわれて、性欲は限界を超えて、股間がみしみしと痛くなっていたが、それでも解放してもらえず――
彼女が飽きて勉強を終える頃には、僕は精魂尽き果てていた。
「楽しい勉強会でしたね! またやりましょうね! わたし、やっぱりたっくんと付き合ってよかったです!」
彼女を自宅の前で見送ってから、僕はダッシュで自室に駆け込んで、何度も性欲を発散した。だが、それでもどこかすっきりしないものが僕の中にくすぶっていたのだった。
それから先も、五花の誘惑は形を変え何度も僕を襲った。
そのたびに僕は疲労困憊し、彼女の言いつけを破って一人でしてしまいたい気持ち、彼女を襲ってしまいたい気持ちで一杯になりながら、必死に性欲と戦っていた。
そんなある日――
僕は彼女がトイレに行った際、彼女の鞄から手帳が落ちているのを見つけてしまう。
僕はなんとなく、その手帳の開いたページが気になった。
そして、見てしまう――
今日の日付には、僕の名前がハートマークとともに記載されていて――
明日の日付には、他のクラスメイトの男子の名前が、ハートマークとともに記載されているのを……!
「え……!?」
僕は、愕然とした。
よく見ると、他の日付には、さらなる他の男子の名前が、ハートマークと共に記載されている。
それらは全て同じ学校の男子生徒の物と思われ――
人数は僕含めて合計5人に及んでいた――
「……これはなんなんだ……五花……?」
僕は帰ってきた五花に手帳を見せて、彼女の真意を問う事にした。
それは愛しい彼女を失うかもしれないとても怖い行為だったが、今回ばかりは勇気を出してやらないといけないと思った。
「……ああ、まだ気づいてなかったんですね? 意外です。たっくんって、結構のんびり屋さんなんですね」
だが、彼女はそんな僕の勇気を嘲笑うように、なんだそんな事か、といった様子で言葉を返してきた。
「……いったい、どういう事?」
「……え? 言わないと分からないんですか? しょうがないなぁ……」
彼女は呆れた様子で、俺にこんな言葉を放った。
「わたしみたいな超絶美少女が、たっくん一人と付き合うわけないじゃないですか。これはそもそも浮気前提の話ですよね?」
彼女は、それがまるで世界の理であるかの様子で、そう語りだした。
「言ってしまえばですよ――」
五花は、その可愛すぎるほどに可愛らしい瞳に、時々彼女が垣間見せる漆黒の闇を浮かべて、こう話していく。
「わたしは、いわば女王蜂なんです。キミ達男子は、オス蜂ですね。オス蜂達は必死に女王蜂の気を引こうとダンスして、選ばれた男子だけが交尾できるんです。わたしはそれを上から眺めているのが、とっても好きなんですよ?」
僕は愕然とした。
そうだったのだ。
僕にとって、彼女は、五十鈴五花は、かけがえのない、大切な彼女だったが――
彼女の目からは、僕はたくさんいるオス蜂の一匹に過ぎず――
彼女はそんなオス蜂達に、ダンスをさせて遊んでいるだけだったのだ――
「分かりましたか、たっくん? これが、大人の世界ってやつですよ」
僕はそんな彼女の言っている事が正しいのかどうかも、もはや良く分からなくなり……
「わたしと別れたいなら、別れてもいいんですよ?」
それでも、彼女とは別れたくなかった。
さんざん性欲を弄ばれたせいかもしれないが……
僕はもはや、彼女の容姿に、声に、性格にすら、魅了されきっており――
彼女なしの人生を考える事すら出来なくなっていた――
「いや……これからも付き合って、欲しい、です……」
そういうと、彼女はにっこりと可憐に笑って、こういった。
「うん、いいですね。すっごく情けなくって、すっごくわたし好みですよ、今のたっくん。ぞくぞくしちゃいました。帰ったら一人でたっくんでオナニーしますね」
そんな言葉に、また僕は性欲をダイレクトに刺激されて、股間が痛くてもだえ苦しむのだった。
「あはは、笑えますね! 今ので股間、痛くなっちゃうんですね! あはははっ!」
そうして彼女に笑われながら、性欲を我慢するのは、とっても辛かった。
だが、これしか僕に道は残されていなかった。
彼女無しでは到底生きてはいけないほどに、僕は彼女に恋焦がれていたのだから――
だが、結局僕は、彼女のいう「オス蜂の競争」に勝ち抜く事は出来なかった。
そもそも、どうすれば勝ち抜けるのかも良く分からない、ルール不明の競争なのだ。
それも当然だった。
もっと言えば、僕には競争に勝ち抜く元気も残っていなかった。
ただただ、日々与えられる彼女からの性的な誘惑に、耐え忍ぶ事しか出来なかったのだ。
それしか、僕には出来なかった。
だから、僕に飽きた彼女が、別れを切り出すのも必然と言えた――
「なんか、最近のたっくん、やる気が感じられないですよね? ……別れましょうか。うん、決めました」
そんな一言で、俺は彼女から切り捨てられた。
僕はその時ですら、いまだに彼女に強い恋心を抱いて、なんとか大事にしたいと思っていたが――
もう僕は、疲れていたのかもしれない――
「ああ……わかったよ……ごめんよ、五花。ごめん」
そうして僕は彼女に振られ――
僕は彼女を失った後の灰色の日々を、主に受験勉強とイラストで紛らわせていた。
彼女と別れてからの方が、誘惑がなくなって勉強やイラストに集中できていたのは、皮肉な事だった。
それから時は経ち――
僕は高校一年生になっていた。
その事は、付き合い始めてしばらくしてからようやく分かってきた。
付き合い始めた当初、僕は彼女と学校にいる間は恋人らしい事が出来ないので、積極的に自宅に彼女を呼んで、イチャイチャしようとした。
彼女は気まぐれな猫のような性格をしていて、最初はまったく理由もなく断る事が多かった。
そのたびに、僕はもっと彼女に好かれなければと、大変に焦りを覚えるのだった。
だが、ついに彼女を自宅に誘う事が出来た時――
僕は、ただただ煮えたぎったマグマのような性欲を、彼女に弄ばれるがままになっていた――
「ねぇ、たっくん。ほらほら、手が止まってますよ? 今日は一緒に勉強するんですよね? せっかくわたしが手取り足取り教えてるんですから、ちゃんとやらないとですよ……!」
僕が自室のこたつに座って教科書とノートを広げて勉強している中――
五花は、僕の背後に座り、僕は彼女に抱きかかえられるような恰好で、勉強する事を強いられていた。
僕のTシャツ一枚になった背中には、ブラウスの奥からでも激しく存在感を主張する彼女の胸がぴったりと押し当てられて、むにゅむにゅとした柔らかさを伝えてきていた。
その感触を味わい続けていると、僕は自分の興奮が際限なく高まっていくのを感じた。
そして、五花は足癖も悪かった。
五花はその短いスカートから伸びた瑞々しい太ももを、僕の脚の上に置いて、時々、その足先で、僕のふとももや股間をくすぐるようにするのだ。
それはもはや完全に性的な接触といっていいレベルに達していると僕は思った。
僕は、そうされるたびに、今すぐこの野獣のような欲望を解き放ちたくてたまらなかった。
だが、ダメなのだ。
僕は彼女と、「彼女に何をされても、彼女に無理やりエッチな事をしない」と約束してしまっていた。
それは、言い換えれば、五花は僕をいくら弄んでも、僕に襲われるリスクが無い事を意味していた。
僕は実際に体験して初めて、その約束の本当の恐ろしさをまざまざと味わっていた。
五花は、そもそも頭のいい天才肌の少女だったが、こと性的な事柄についても天才と言って差し支えなかっただろう。
五花は常に絶妙なタイミングで僕の性欲を刺激し、ムラムラが止まらなくなったタイミングで無慈悲にも勉強に話を移し、僕が普段なら簡単に解ける数学の問題すら、悪戦苦闘しているのを見て、
「たっくんはダメダメですねぇ。やっぱりわたしがもっと面倒みてあげないとダメですね? ほら、ちょっと息抜きしましょうか。わたしの太ももに頭を置いて寝ころんでくださいよ? 膝枕してあげます。えへへ、なんだか恋人っぽいですね!」
などと、またしても僕の煩悩を刺激しにかかるのだ。
色々と言いたい事はあったが、僕は結局五花に抗う気力もなく、ただただ言われるがままに膝枕を享受する。
膝枕されている間、頭で味わう彼女のぷにぷにとした柔らかい肉の感触と、目の前に広がった乱れた短いスカートに、面積の大きな肌色のふともも、その下から覗く桃色の下着のコンビネーションで、僕はもう本当に、これ以上は我慢できないという境地にまで至ってしまった。
とにもかくにも、性欲を発散したい。
そうしないと、僕は本当にこの大切な彼女を襲ってしまう。
そう思った僕は、「ちょ、ちょっとトイレ……」といって席を立とうとする。
「……一人でエッチな事しちゃうんですか?」
だが返ってきた彼女の言葉は、思った以上に直接的に、僕の行動を咎めるものだった。
「……ねぇたっくん、彼女と勉強してて、エッチな事が我慢できなくて一人エッチしちゃうのは、ちょっと男として格好悪すぎじゃないですか? オタク君ってそういう人の事を言うんですかね? わたし、自分の彼氏が、そういう格好悪い人なんだとは、思いたくないんですけど……」
僕は、自分の情けない行動を馬鹿にされ、オタクである事も馬鹿にされたと思い、自分が情けなくてたまらなくなった。
「大丈夫ですよ、たっくん。わたしがちゃんと勉強できるように、サポートしてあげますから♪ ほら、トイレなんて嘘言ってないで、こっち座ってくださいよ♪ 彼女が密着して勉強教えてくれるなんて、滅多にない機会ですよ? それも成績優秀万能美少女の五花ちゃんが教えてくれるんですから♪」
五花は情けない僕を見てどんどん機嫌を良くしているようで、楽しそうな口調と表情で僕を再び勉強机に座らせようとする。
僕に、逆らう手立てはなかった。
気分は、処刑台に向かう囚人だったが――
それに抵抗する方策は、もはや一切残されていなかった。
それからも、僕は散々弄ばれて、からかわれて、性欲は限界を超えて、股間がみしみしと痛くなっていたが、それでも解放してもらえず――
彼女が飽きて勉強を終える頃には、僕は精魂尽き果てていた。
「楽しい勉強会でしたね! またやりましょうね! わたし、やっぱりたっくんと付き合ってよかったです!」
彼女を自宅の前で見送ってから、僕はダッシュで自室に駆け込んで、何度も性欲を発散した。だが、それでもどこかすっきりしないものが僕の中にくすぶっていたのだった。
それから先も、五花の誘惑は形を変え何度も僕を襲った。
そのたびに僕は疲労困憊し、彼女の言いつけを破って一人でしてしまいたい気持ち、彼女を襲ってしまいたい気持ちで一杯になりながら、必死に性欲と戦っていた。
そんなある日――
僕は彼女がトイレに行った際、彼女の鞄から手帳が落ちているのを見つけてしまう。
僕はなんとなく、その手帳の開いたページが気になった。
そして、見てしまう――
今日の日付には、僕の名前がハートマークとともに記載されていて――
明日の日付には、他のクラスメイトの男子の名前が、ハートマークとともに記載されているのを……!
「え……!?」
僕は、愕然とした。
よく見ると、他の日付には、さらなる他の男子の名前が、ハートマークと共に記載されている。
それらは全て同じ学校の男子生徒の物と思われ――
人数は僕含めて合計5人に及んでいた――
「……これはなんなんだ……五花……?」
僕は帰ってきた五花に手帳を見せて、彼女の真意を問う事にした。
それは愛しい彼女を失うかもしれないとても怖い行為だったが、今回ばかりは勇気を出してやらないといけないと思った。
「……ああ、まだ気づいてなかったんですね? 意外です。たっくんって、結構のんびり屋さんなんですね」
だが、彼女はそんな僕の勇気を嘲笑うように、なんだそんな事か、といった様子で言葉を返してきた。
「……いったい、どういう事?」
「……え? 言わないと分からないんですか? しょうがないなぁ……」
彼女は呆れた様子で、俺にこんな言葉を放った。
「わたしみたいな超絶美少女が、たっくん一人と付き合うわけないじゃないですか。これはそもそも浮気前提の話ですよね?」
彼女は、それがまるで世界の理であるかの様子で、そう語りだした。
「言ってしまえばですよ――」
五花は、その可愛すぎるほどに可愛らしい瞳に、時々彼女が垣間見せる漆黒の闇を浮かべて、こう話していく。
「わたしは、いわば女王蜂なんです。キミ達男子は、オス蜂ですね。オス蜂達は必死に女王蜂の気を引こうとダンスして、選ばれた男子だけが交尾できるんです。わたしはそれを上から眺めているのが、とっても好きなんですよ?」
僕は愕然とした。
そうだったのだ。
僕にとって、彼女は、五十鈴五花は、かけがえのない、大切な彼女だったが――
彼女の目からは、僕はたくさんいるオス蜂の一匹に過ぎず――
彼女はそんなオス蜂達に、ダンスをさせて遊んでいるだけだったのだ――
「分かりましたか、たっくん? これが、大人の世界ってやつですよ」
僕はそんな彼女の言っている事が正しいのかどうかも、もはや良く分からなくなり……
「わたしと別れたいなら、別れてもいいんですよ?」
それでも、彼女とは別れたくなかった。
さんざん性欲を弄ばれたせいかもしれないが……
僕はもはや、彼女の容姿に、声に、性格にすら、魅了されきっており――
彼女なしの人生を考える事すら出来なくなっていた――
「いや……これからも付き合って、欲しい、です……」
そういうと、彼女はにっこりと可憐に笑って、こういった。
「うん、いいですね。すっごく情けなくって、すっごくわたし好みですよ、今のたっくん。ぞくぞくしちゃいました。帰ったら一人でたっくんでオナニーしますね」
そんな言葉に、また僕は性欲をダイレクトに刺激されて、股間が痛くてもだえ苦しむのだった。
「あはは、笑えますね! 今ので股間、痛くなっちゃうんですね! あはははっ!」
そうして彼女に笑われながら、性欲を我慢するのは、とっても辛かった。
だが、これしか僕に道は残されていなかった。
彼女無しでは到底生きてはいけないほどに、僕は彼女に恋焦がれていたのだから――
だが、結局僕は、彼女のいう「オス蜂の競争」に勝ち抜く事は出来なかった。
そもそも、どうすれば勝ち抜けるのかも良く分からない、ルール不明の競争なのだ。
それも当然だった。
もっと言えば、僕には競争に勝ち抜く元気も残っていなかった。
ただただ、日々与えられる彼女からの性的な誘惑に、耐え忍ぶ事しか出来なかったのだ。
それしか、僕には出来なかった。
だから、僕に飽きた彼女が、別れを切り出すのも必然と言えた――
「なんか、最近のたっくん、やる気が感じられないですよね? ……別れましょうか。うん、決めました」
そんな一言で、俺は彼女から切り捨てられた。
僕はその時ですら、いまだに彼女に強い恋心を抱いて、なんとか大事にしたいと思っていたが――
もう僕は、疲れていたのかもしれない――
「ああ……わかったよ……ごめんよ、五花。ごめん」
そうして僕は彼女に振られ――
僕は彼女を失った後の灰色の日々を、主に受験勉強とイラストで紛らわせていた。
彼女と別れてからの方が、誘惑がなくなって勉強やイラストに集中できていたのは、皮肉な事だった。
それから時は経ち――
僕は高校一年生になっていた。