「あなたたちは家族じゃない。私の力を利用したいだけの家族なんていらない!私の愛する十六夜様を傷つけた人たちを絶対に許さない!」

榛名の中ではどんなに苦し辛く寂しくて消えたい日々を送ってたとしても家族だからと信じ、情もあったから恨みなんてなかった。

消えたくても癒しの力で勝手に治る力が大嫌いだった。でもそんな嫌いな力が十六夜に必要とされ自分が誰かの役に立てたと嬉しかった。
十六夜から優しさや愛をもらった。
だから自分を虐げた家族なんていらない。

(十六夜様から優しいと言ってくれたけど、私は優しくないよ…もう情なんて捨てたもの)

「あ"?」
冬史郎は榛名の首輪を掴む。

「榛名はさ、昔はお兄ちゃんと結婚したいとか大好きって言ったよな?お兄ちゃん嬉しかったんだよ。大好きなお兄ちゃんを裏切るような可愛げのない子は躾を厳しくしないといけないようだ」

笑顔から怒りがこみ上げるような表情と声色になった。

「躾ね♪」
雪愛は参戦する気満々だ。


「ちょい待ち〜」
翼が現れた。

「翼様ぁ!榛名が私に逆らうのよ!痛めつけてよ〜」
雪愛は翼にお願いをする

「雪愛待たせたな。あの龍神もどきはオレが消したよ」
「え?」
雪愛は十六夜と榛名を引き離し、榛名だけ孤立させ力を返してもらい、十六夜は軽く足留め程度痛めつけてから雪愛が治して十六夜に自分こそが本当の神子で番だとアピールするつもりだった。

「あいつ雪愛を惑わしたりしたんだぜ!許せねぇよ!オレさえいればいいんだからな、雪愛!」

「…そうね」
雪愛は「自分の予定と違うじゃない!」と怒りたかったが平然と装った。

「雪愛、ちょっとこの忌み子借りるな。神通力返してもらう方法見つけてやるからさ」

「わかったわ。すぐ欲しいんだから早くしてね」
神通力だけでも手に入れれば自分に価値が付く。十六夜の方は後で確認させればいいと考えた。

「…十六夜様を消したってどういうこと!」
榛名は翼の言葉が信じられず、思考が少し停止してしまった。

「死んだんだよ。この剣…龍神を殺せる剣でな」

「…!」

「初代神子が死んで暴れた龍神を抑える為に神が作って天狗のオレらに預けたんだ。神はあくまで抑えただけで慈悲で仕留めなかったが、オレはそんな甘くないぜ」

(そんな剣が………十六夜が……………死んだ?………嘘だよね?……嘘…嘘……嘘…信用しちゃダメ……)

雪愛と翼は大粒の涙を流しながら悔しそうな榛名を見て嬉しそうに笑った。

「あははっ♪忌み子はこの顔が一番お似合いよね」

「さてと…」
翼は榛名の髪を引っ張り無理矢理、変な液体を飲ませると体全体にピリピリとした静電気が走ると、体内から複数の小さな爆弾が爆発したような感覚で、体の機能が壊れていくようだった。

「あ…くうぅ!」
榛名は体が耐えられず、意識を失う

「癒しの力だっけ?で治るだろうけど暫くお寝んねしてな」
翼は榛名を担ぎアヤカシの世界に繋がる次元の穴を呼び、アヤカシの世界へ行った。