「空気読まずに申し訳ないのですが、神通力はどういう基準で現れるのでしょうか…その…霊力の強い雪愛に神通力がないのはおかしいなって思いまして」

雪愛から無意識で奪ったのではないのか?と思ってしまった。気を強く持とうとし雪愛に反抗してしまったのはまずかったのでは?と。自己評価が低いので自信がないウジウジな自分に嫌気がさす。


『神や天界に住む者は神通力が備わっているし、初代神子やムクとミクのように人工的に与えることはできるな』
「では私が雪愛に与えることはできるのでしょうか?」

『人間は無理だな。だが、お前は神通力が異常に高いから可能だ。俺様にくれた首飾りや葵の首輪はお前の神通力(きもち)が入ってただろ?…お前はあの妹に与えたいか?』


「渡したくありません。神通力も十六夜様も」

『ふ…嬉しいことを言ってくれる。人間の神通力は稀に現れるが、その人選は運だ。だから榛名は小娘に渡す必要ないし、榛名自身の力だ』

まだ自信がなくウジウジの榛名を見抜くように励まして自信を持たせようとしてくれたのだろう。

『運…つまり俺と榛名の運命の力に決まっている』

「十六夜様…」

榛名は顔と耳を赤らめ、十六夜は顎をクイッとしキスしょうとする。

そんな甘々な雰囲気の2人に光希と七宝は居心地悪くなり、退散でもしょうかと考えていると、甘々な雰囲気をぶち壊すようにムクとミクは口を出す

「"俺にはヤエだけしか愛すつもりはない”って言ってハルナ様を傷つけたクセに調子良いですぅ!」
「そうなの!」

『…お前らなぁ〜』

「痛いですぅぅ!」
「きゃうぅぅなの〜」
十六夜はムクとミクの頭をグリグリした。


「ムクちゃんとミクちゃん…可哀想だけど可愛らしいですわ」
光希はキュンとしていた。







そんな話しをしてから数日後、十六夜の元には葵から緊急の連絡があった。



葵は自分の羽根を1枚もぎ取り、伝えたいことを音声録音するように喋り、羽根を離れた十六夜の元へ届けていた。
これも御庭番として十六夜から貰った能力の一つだ。

十六夜は葵から緊急の知らせを受け、榛名と光希と七宝の3人にも内容を伝えることにした。

内容は
「神代家で天狗と妖狐の当主同士の話し合いをすることになったので、十六夜に立会人になってもらいたい」
「翼が妖狐から狐火を喰らい、全身大火傷をしてしまったので榛名に治療をしてもらいたい」
「神楽家は榛名に謝罪したいこと、また家族として一緒に暮らしたいので話しをしたい」の3つを神楽家当主である父と天狗の当主の使いの者から、神代家当主に打診をしてきたそうだ。


『罠だな』
「罠ですね」
十六夜と七宝は揃って否定した。

「え…」

(家族と一緒に…?)

『榛名どうした?まさか行きたいなんて言わないだろうな?』

「あ…えっと…翼様が大火傷をされたのなら行かなければと…」

『アヤカシは体が丈夫だ。アヤカシ同士でも余程の事がない限りは時間がたてば回復する』

「大火傷は重症かと思います。…それに」

『家族か』
「はい。雪愛が天狗のアヤカシを動かしているのなら翼様くらい止めらるかと…雪愛をなんとかしなければいけないのですよね。もし翼様が大火傷しているのなら天狗に恩ができると思います!」

『……榛名は本当に可愛いな』
「?」
榛名は罠だとしても怪我をしているなら放って置けないと思った。そして雪愛もだが、家族としっかり話し合いができるチャンスがあるならと。

十六夜は榛名の気持ちを察し、愛しくて守りたいと想っていた。

「妖狐は相手の意思を確認してからじゃないと手を出す一族じゃないよ。火傷は嘘だ」

「私もそう思いますわ。雪愛さんは榛名様の力を欲しています。雪愛さんも他の家族もまた貴女を虐げてることもありますわ」

光希と七宝は榛名を説得しようとした。

「………」

十六夜はフッと笑い、榛名の髪に優しくキスをした。

『榛名、自分の目で確かめてこい。お前の優しい心を守ってやりたいが嘘を見抜き人の本心を知ることも大切だからな』

「十六夜様!!」
光希と七宝は驚き、思わず大きな声を出すが十六夜は気にしなかった。

「ありがとうございます!」

『ああ。俺から絶対に離れないと誓え』
「はい!」