「光希様……え?どうされたのですか!」

光希の姿ともう一人、男性がいた。


光希は顔色が悪く、眼帯や片足を引きずっている。

神代家の使用人に運ばれてきた男性。
十六夜が榛名に妖狐のアヤカシだと耳元で教えてくれた。妖狐のアヤカシは体中に包帯を巻かれ、光希より顔色が悪く血が通ってないのかと思うほど青白い。
瀕死の死にかけだった。

住人たちもあまりの酷さに悲鳴をあげるほどだ。

「ひでぇ…」
「アヤカシって体が丈夫なんでしょ?天狗の次に地位の高いアヤカシよ」


「えっ?」

榛名が住人たちの方を見た時、翼が嘲笑っていたのだ

(き、気のせいだよね…)

「光希…龍神様の前で無礼だぞ」
清正が光希にいい聞かせるが、光希は必死だ

「わかっておりますわ、お父様!でも…助かるなら…助けてくださるなら…神にでも(すが)るしかないのですわ」

「光希様…十六夜様よろしいですか?」
榛名は十六夜の目を見つめる。

『構わん。今のお前なら2人同時にできるはずだ。島の連中に自分こそが神子だと見せつけてやれ』

「はいっ!」
見せつるのはどうでもいいが、まずは2人が優先せねばならない。



妖狐のアヤカシを地面に寝かせ、光希には座ってもらい「手、失礼しますね」と2人の手を握り集中する


榛名は癒しの力…治癒力を使う。
虹色の光を放ち、光希は一瞬だったが妖狐のアヤカシは数分と時間がかかるも徐々に顔色が良くなった。


光希や清正、住人全員が榛名の体から放つ虹色の光が見えたのだろう驚いていた。


光希は安堵から涙を流し、何度も何度も榛名にお礼を伝える。

榛名は疲れから喋れず、代わりに微笑むことで光希の気持ちに応えた


『…光希と言ったな、事情がかわった。お前と妖狐を俺の住処に連れて行く。決定事項だ、すぐ準備してこい』

「は、はい!」
「どうなされたのですか?」

慌てて本家に戻り準備を始める。
清正は事情を尋ねるも無視され、龍神様の決定ならと従うことに。



雪愛は小さく舌打ちをした。

怒りが最高潮に来ているのかもしれない。



十六夜は龍の姿になり榛名、光希、まだ目覚めていない妖狐のアヤカシを連れ島へ帰る