榛名は十六夜へのバレンタイン贈り物を思いつき、実行することにした。

「できるかわからないけど…」



✱✱✱✱✱✱✱Side  東丿島   ✱✱✱✱✱✱✱


時は1週間前に(のぼ)る。


東丿島では雪愛がイライラしていた。

「ほんとっ!!信じられない!!」

「………」

「落ち着けって」

光希が雪愛たちが罪のない女子生徒を虐めている事を報告し、神代家当主は雪愛の両親にこの事を伝えた上で、雪愛と冬史郎を2週間の謹慎処分にした。

…したのだが、天狗のアヤカシの翼と翼の父である天狗の当主が神代家当主に掛け合い謹慎は3日間と甘い処分となった。
島には島の掟や決まりがあるのはアヤカシも理解しているし、繁栄を望むアヤカシは島の住人と上手くやって行きたいと考えている。
大昔、西ノ島で天狗のアヤカシといざこざがあったのをアヤカシ達は知っているからこそだ。


とはいえ、神代家はアヤカシには強くは言えない。

光希のアヤカシは天狗の下の妖狐なので光希や相手の妖狐の事を想うと尚更。



3日間といえど、生まれた時から「特別中の特別」「規格外の存在」だと島中から(たた)えられ、我儘で我慢ができない性格の雪愛は今回、人生初めてであろう罰を受け、怒り狂っていた。

兄である冬史郎は雪愛ほどではないが「雪愛の兄」として権力を振るい傲慢な性格になっていた。榛名も上位のアヤカシの番になるだろうと期待して優しくしていたが霊力がないとわかると榛名を「裏切り者」と勝手な思い込みで憎悪を抱くほどだった。


「ホントにやりやがったあの女!虐めてやろうとしたのに、私の取り巻き全員、相手が神代家だからってビビって引き下がりやがったのよ!!アイツらタダじゃおかない!」


「まて…上手くやらないと次はないぞ」

怒り狂っている雪愛を冷静にさせる冬史郎。

「わかってるわよ。私は天狗の次期当主の番ってこと、体と心でわからせてやるわ」

雪愛は翼にキスをして甘えた声で「お•ね•が•い」と(ささや)いた。

「…オレはいつでも雪愛の味方だからな。何をするんだ?全て叶えてやる」



海辺で休むために東丿島にやって来た海鳥をみつけた

「島の住人だとヤバいもんね。まずは目の前のストレス発散しないと…」

「そうだな。ムシャクシャしている」


「…?」
海鳥は近づく人影に気づくと飛びたとうとしたのだが…






「ピィエエエエーー!!」