榛名は握りしめたクレープを口に頬張る。ちょっとクリームがはみ出して食べにくい。

十六夜は闇の煙を眺めていた。

「十六夜様、2つ質問いいですか?」
『ああ』

「闇に侵食されているんですよね?闇に支配されたりとか、寿命が縮まるとか何かデメリットはあるのですか?」

『前も言ったが見た目や見えないだけで体中が侵されているが…特にないな。禁忌を犯した者として見た目が変わったのと体の中にがモヤのようなものがあって常に気持ち悪さは付き纏うくらいか。そういえば、使える能力が変わったくらいだな』

「能力?」

『今は雷属性だが、本来の青龍は木属性だ。天恵(てんけい)で農作物や樹木や花に生命を育むことができる』

「わぁあ。素敵なお力ですね。お優しい十六夜様にピッタリです」

『そうでもないさ。もう1つの質問はなんだ?』

「私の神通力の事です。私は自分じゃどの程度かわからないのですが…十六夜様と体を…その重ねた場合、闇を浄化するのに、どのくらいかかるかと…一度きりではないですよね?」

遠くない未来にやらねばならない。
十六夜を救いたい、役に立ちたい気持ちはあるが、十六夜が本来の姿に戻るということは生贄として食われる。自身の生の終わりを告げる。


『普段のお前とキスしている時のお前の神通力の高ぶりが違う。圧倒的にキスしている時が高いな。毎晩体を重ねたとしても最低10年か20年だな』

「10年…20年…それは時間かかりますね。それだけ闇は酷いんでしょうか?」

『何を言ってる、早い方だぞ』

(つまりあと10年は十六夜様といられるんだ。10年後は十六夜様への気持ちどうなってるのかな…)

『天界の神たちでも癒やしの力を持つ者はほぼ皆無みたいなものだ。お前の神通力は特異点だ』

「特異点?」

『ああ。神通力は霊力のように一度力が付けば一生変わらない。だが、お前は成長しているんだ…お前には無限の力があるのかもな』

榛名の髪を優しく撫でる十六夜

「あの…不躾ですが私の神通力は元は八重さんの力ではないのですか?」

自分に自信がなく自己評価の低い榛名は自分の力が信じらない。

『お前自身の力だ。4つの島の初代神子は平等に神通力を与えられているが、お前のは初代を凌ぐほど強い力だぞ。癒やしの力は幻に近いほど稀なんだ。自信持て』

「はい、ありがとうございます」

十六夜はその言葉を聞き、榛名のおでこにキスをした