『ほれ』
「十六夜様自ら…ありがとうございます!」
十六夜は榛名にお茶を煎れ、エネルギー補給にとチョコやクッキーを持ってきてくれた。

疲れた後の甘いものは心に沁みるほど幸せ感があった。


「こんなに疲れるとは思いませんでした。私自身が傷や病気になった時は勝手に治るし疲れないのに」

『おそらく生きたいと願う人間の本能だろう。自身と他者はエネルギーの流れが違うんだ。生きたいと願えばお前の力を受け入れ、死にたいと願えばお前を拒み治癒も難しい。あの鳥は生死より恐怖心に支配されてたんだろう』


「一体どんな恐怖心を植え付けられたの…私が知らないだけで頻繁にやられてるのかな…私だけに向けてくれればいいのに…」

榛名にとって海鳥の傷は自身の恐怖心や境遇が似ている気がしていた。


『近いうちに東丿島の様子見に行ってやるからひとまず、考えを捨てておけ』


「はい。色々とありがとうございます」


「十六夜様、今回のように私が手を置けば十六夜様の闇も祓うことができるのではないですか?」

思いついたことを話した榛名だが十六夜の反応がいまいちだ。


『治癒の方は外傷的なものだけだ。俺のは体の中から侵食されている。唇や体を重ね、お前の神通力が俺の体に入ってこなくては意味がないんだ。接吻だけでお前の神通力は強く反応するようだから体を重ねるのが楽しみだな』

「…はい」
(十六夜様とキスするとドキドキだけなんだけどな…)


『俺は八重以外は抱きたくもないが…俺も自分の身は可愛いからな。癒やしの力を持つ、お前を逃がすつもりはないぞ』

十六夜は榛名を抱きしめる。
お役目の合図だ。

「……はい」

十六夜と唇を重ねる榛名は心を痛めた表情だったが、十六夜にはみえていない






隙間からみていたムクとミクはコソコソしながら
「あーあーやっちまったな」と顔をしかめた