番外編⑥【LikeがLoveに変わる時】


青龍(龍神)の十六夜にはニホンジカの子鹿の男の子・ムクとミク、海鳥の女の子・葵という従者がいる。

ムクとミクは数百年前から十六夜と共にいるが葵は日が浅い。
葵は榛名に助けられてから主君の十六夜ではなく榛名に懐いており、榛名のお願いは聞くが十六夜の命令は榛名が関係しなければ一切聞く耳を持たない。

大好きな榛名には幸せになってもらいたいと思い、十六夜との恋を応援し見守っていた。


2人が晴れて番となり、十六夜と榛名が天界に行くというので葵はもちろん、ムクとミクも一緒に付いてきた。
慣れない天界暮しに榛名と共に葵たちも戸惑っていたものの慣れて来た頃………


「榛名様ぁ〜抱っこしてくださいませ」
「うん、葵はフワフワで気持ちいいから大歓迎だよ」
葵の定位置は榛名の膝の上だ。
大好きな榛名に撫でてもらうのが葵の幸せでもある。

『おい、ちょっとお前は榛名に甘えすぎではないか?俺も榛名に膝枕してもらいたいんだが!』
「男の嫉妬は醜いですわん。榛名様は女同士のワタクシの方が話しやすいって言ってますわん」

十六夜は葵に嫉妬し文句を言ってきたが葵は気にしない。むしろ十六夜が哀れにすら思えたのだが、榛名と十六夜が何度も何度も甘々なキスを交わしている姿をみると葵は腹が立って仕方なかった。

幾度となく2人が幸せなキスをしているのを見ていたのに、最近は気持ちがムズムズする。

榛名が幸せなのはいい事だ、しかしなぜ十六夜なのか…と。

不機嫌な葵はムクとミクの毛を毟っていた。
「やめるですぅ〜」
「ハゲるなの〜」
「うるさいですわん!ムシャクシャする〜〜」

納得したのか毛を毟るのをやめ、落ち着きを取り戻した時、葵はふと気がついた。

━━━━これは恋なのでは!と。


この想いが恋だと気付いた葵は榛名に激重感情を抱き「女同士」であることを利用し甘えまくった。

葵としては榛名の幸せは壊すつもりはない。
好きな想いを隠しきれないだけ。

いつかは自分が榛名様の花嫁になりたいと願うようになっただけ。




『もしかしてアイツを従者にしたのは間違いだったか?』
「もう遅いですぅ」
「十六夜様の恋敵ができたなの。頑張るなの〜」

榛名は葵の激重感情に気づいていないが、十六夜とムクとミクは気づいており、頭を抱えていた。



「榛名様〜"2人っきり”で寝たいですわん」
「いいよ。人型の葵は美人さんだからドキドキしちゃうね〜」
「ふふっ。榛名様を寝かせないのも悪くないですわん」
人型になった葵は榛名と手を繋ぎながらベッドまで歩いて行く姿を十六夜は慌てて追いかけたのだった。