番外編⑤【ムクとミクは十六夜様が大好き】

ムクとミクは青龍(龍神)の十六夜の使いをしている子鹿だ。
十六夜から神通力を与えてられムクは水色、ミクはピンク色の体毛をして一年中夏毛の斑点模様のある鹿の子模様だ。

ムクとミクの役目は人型に姿をかえ主人の十六夜のお世話係やたまに武闘派になり十六夜を守る。

十六夜は小さい無人島に結界を張り、ムクとミクと3人暮らしをしていた。
十六夜は暇つぶしに街や山などに出かけていた。


「わぁ。親子鹿ですぅ〜」
「もうすぐ1歳くらいなのに甘えんぼさんなの〜」

ムクとミクは十六夜と一緒に山に来ていて、十六夜の島にはない草を食べていると親子鹿を見かけコッソリ静かに見守っていた。

5月中旬から6月頃は鹿の出産ラッシュの時期だ。
たまに秋や冬に産まれの子鹿もいるがだいたいは春生まれの鹿ばかりだ。
見かけた親子鹿の子鹿は春生まれたようだ。


子鹿を見るとムクとミクは昔を思い出していた。
ムクとミクがまだただの子鹿だった時代。



ムクとミクはまだ名前すらなかった子鹿時代は東ノ島で産まれた。2頭は同じグループの同じ日に産まれ、幼馴染の仲。それぞれの母鹿が食事に出掛ければ茂みや木の隙間に隠れ一緒に待っていた。

ある日、いつまで経っても母鹿が帰ってこない。
近くを探したり鳴いてみたが帰ってこず、他の鹿仲間や動物たちすら見かけなくなり不安と空腹で2頭は体を寄せ合いながら過ごしていた。
まだ母鹿の母乳しか飲めず草を食べられない。

小さいながら死を悟っていると人が現れた。一瞬怯えたが人間ではないと感じた。
金色の瞳の青髪の男性。

「鹿か?今は狩猟をしているらしいから気をつけろよ」

(助けて…お腹空いた)
(ママいない…)

子鹿は助けを求めると男性は手をかざした

「?」
何をしているかわからなかったが元気になったのだけはわかった。
男性に連れられ山を下り人が住む場所に来た。

男性は「十六夜」と名乗り、龍の神様だとか。その十六夜のお嫁さんの「八重」を紹介された。

その八重から母鹿は狩猟で鹿鍋にされたのでは?と聞き、泣いた。ママを殺した人間に怒りが湧き暴れまくる不良鹿になり八重を困らせたが、十六夜は愛する八重の為に動物たちを剛力筋肉質なムキムキマッチョにすると銃が効かず狩猟が無くなった。

「これでもうお前たちのママも浮かばれるから大人しくしろ」
十六夜は諭してくれ怒りも落ち着いた。

無垢な子鹿で「ムク」。未来と書いて「ミク」と名付けられた。
名を与えてられると人型になったり喋れるようになった。
まだ母乳でしか生きられない時期だが神通力の力で草やドングリなどを食べられるようになった。

ムクとミクは普段は十六夜と八重、2人の子の世話をしていた。


八重はある時、真剣な顔で「十六夜が怒りで我を忘れたら動物たちや私たちの子を避難させて守ってね。それから十六夜の心を守ってあげてね。お願い」と。
十六夜に言わないで欲しいと言われ十六夜には黙った。

そして悲劇の日。
十六夜は留守にしムクとミクは八重から山へ遊びに行っておいでと言われ気づかなかった。


十六夜が悲劇を知り怒り、ムクとミクはそんな十六夜に怯えながらも動物たちや2人の子孫を避難させ約束を守った。


十六夜の怒りが収まった頃、一緒に無人島に付いていったが十六夜は悲しみムクとミクは無知なこともあり、何もできなかった。

今思えば八重は神子の力は「予言」。普通なら避けようと思えば避けられたかもしれないが、閉鎖された島では逃げられなかったので運命を受け入れたのかもしれない。
十六夜の運命のことも。
だから予言を残したんだと。




━━━━数百年後の現在。

「おかえりなさい!十六夜様、それにムクちゃんにミクちゃん!!」

「ただいまですぅ〜」
「ハルナ様も一緒に行けばよかったなの〜」

十六夜と一緒に出掛け帰ってくると榛名が待っていた。


榛名は十六夜と接吻すると悲しそうな顔をしている。
十六夜も八重の事が忘れられない。
そんな2人にムクとミクはヤキモキしていた。



だからムクとミクは願った。

大好きな十六夜様が幸せになりますように。
優しくて大好きなハルナ様が十六夜様と幸せになりますようにと。

笑顔いっぱいの十六夜様がみたいと。