番外編③「四月一日の運命」


榛名がまだ幼い頃、榛名には6つ上の兄・冬史郎と2つ下の雪愛がいた。

雪愛は霊力が強く最上位の天狗のアヤカシの番になった。
産まれて間もないので雪愛の意思を無視し両親が決めた。
両親は「最上位のアヤカシの番」である妹を甘やかし構うので榛名と冬史郎はほとんど何もしてくれなかった。

使用人がいなかったら餓死してたんじゃないかと思うくらいに放置されていた。
寂しい思いもしたが、榛名はよく冬史郎に遊んでもらっていたので寂しさは紛れていた。

榛名にとって初めての妹の雪愛のことは可愛いと思っていたが常に両親と一緒だった。
たまに「おねーたん遊んで〜」とやってくる雪愛。

一緒に遊んでいると突然不機嫌になる。
「いやぁ〜ユキはおしゃかな嫌いなの!」
「痛っ。雪愛、食べ物粗末にしちゃダメだよ」
おままごとで遊んでいると魚の玩具を榛名に投げつけた。
奇声を発しながら物を投げたりと自分の思い通りにならないと泣く叫ぶ暴れると手がつけられなかった。

すぐに両親が駆けつけ「美味しいお菓子食べようね〜雪愛ちゃんだけ特別だよ〜」と泣き喚く雪愛を庇った。
雪愛は親がすべき教育はされておらず、何度か雪愛を思い注意をしても直らなかった。
のちに学校が通うようになっても我儘放題で親もモンペ化していた。年頃になると翼の前では可愛い自分を演じるために必要なことは身につけたようだが。

冬史郎も榛名より雪愛を可愛がるようになった。それでも榛名を変わらず可愛がってくれた。


4月1日。
榛名が8歳の誕生日を迎えた。

8歳までに霊力が現れるとされている。
なぜ8歳か不明だが。
島の住人は霊力があって当たり前で霊力の強弱くらいは判別がつくのだが、榛名には霊力がなかった。

霊力がかなり弱いのかと思い龍神を祀る、青龍神社にある龍神の鱗を借りた。

この龍神の鱗は名前の通り、龍神が昔、贈ったもので、神の力で霊力測定機能?のようなものがあるのだとか。

霊力がどんなに弱くても一瞬は反応するはずなのだ。
榛名は言われるまま、鱗に手をおくが全く反応しない。

母親は大声で叫び、父親は「忌み子だ!!神楽家の恥さらしだ!!」と榛名に手をあげた。


榛名は訳もわからず泣き、大好きな兄に縋ろうとすると「触るな!穢るだろ!」と突き飛ばされた。

家族が榛名を見る目が変わった。

榛名にとっても8歳の誕生日は地獄へ変わった。


乱暴な扱いをされながら家に戻ると、地下の牢屋に入れられた。
神楽家は昔は罪人の管理を任されていたのでそこに榛名を監禁したのだ。

榛名は泣き叫んでいた。
少しずつ島中に忌み子のことを知られ、奴隷以下の扱いや歩くたびに暴言や石を投げられるようになった。

榛名はいつからか怪我をすると神通力が発動していたが榛名を見下し虐げる家族や島の住人は気づくことはなかった。







一方、榛名が鱗に手をかざした同時刻。


『ん?なんだ妙な感覚は?』
「どうしたなの?」
「ですぅ?」

十六夜は東ノ島がある方角に目を向けた。


『……いや、神通力の気配を感じた気がしたんだが…気のせいだな』

住処にしている島の屋敷に入って行った。