番外編②【神楽家の最後】


翼からの指示で榛名と雪愛の両親と兄の冬史郎は神楽家で待機していた。

「翼様は榛名を返してくださるのかしら?榛名がいないと島の長にはなれないのよ」
「さぁな…雪愛の話だと神通力は自分のものだと言っていたが霊力と違って神通力はわからん」

「どっちにしろ榛名は必要ですよ」
両親は榛名の癒やしの力を見たが、可愛い雪愛の言葉も信じたいので考え方や正しい判断できずあやふやだ。

榛名にしろ雪愛にしろ自分たちが権力を持つには片方は必要になる


翼だけではなく、雪愛も帰ってこず翌日を向かえると島の住人たちが騒がしい。
外に出るとザワザワと神楽家に群がっていた。

「一体何なんだ!」
「神楽家の方々でお間違いないですね?龍神様と神代家当主様の命令により神子様を虐げ雪愛の企みに手を貸した罪で投獄する!」

神楽家は抵抗するも神代家の護衛や使用人たちの手で囚われてしまった。

そして翼が暴走したことや雪愛の死を知る

「そんな…榛名を手に入れられないどころか雪愛がいなくなったらオレは…オレは…雪愛の野郎余計なことしゃがって!!クソがぁ!!」


「雪愛本当に使えない奴だ…!」
「我儘だって天狗の番だから仕方なく聞いてあげたのに馬鹿なことをして!」

冬史郎と両親は雪愛が亡くなったことを悲しむことなく、己のことばかりで榛名と雪愛は権力を行使するための都合の良い道具としてみていなかった。


神楽家の処分は神代家当主の清正に任されている。
海に生贄として捧げようか考えたが甘いと判断し、榛名と同じ仕打ちを受けさせ、榛名の痛みを知ってもらうことになった。

狭い牢屋の中で3人閉じ込められ、次第に雪愛への恨みを吐くのをやめ、それぞれが不満吐きや喧嘩するようになった。
榛名は癒やしの力があったため無事だったが、なんの能力もない人間が、手や口から食事をしたり風呂もまともに入れない中で衛生状態が悪く菌が繁殖したのか感染が広まってしまった。
耐えられず母親が亡くなり、間もなく父親も亡くなった。


冬史郎だけ生き延びたが絶望しかなく死を待つ日々を過ごした。



「オレは天狗のアヤカシの雪愛の兄…龍神の神子である榛名の兄だぞ…」
冬史郎は毎日のように何度も呟いていた。