「別に気にしないからいいよ。お前初めて会った時から生意気だもん」
「……」

事実を述べたまでなんだけど、未早はあからさまショックを受けていた。前傾になり、頭が痛そうに呟く。
「確かに、思ったことすぐ言っちゃう自覚はあります。そのせいで中学のとき、女子と険悪になった事もたくさん……俺ってやっぱり、生意気ですか」
「あぁ! 生意気。超生意気。会った頃は練習し過ぎて腱鞘炎になれって思ってた。マウスピースにエタノール付けてやろうかと思ったこともある」
「いやそれ殺人のレベルですよね」
どうしようもないやり取りを交わした後、数秒無言になり。また、お互い吹き出した。
「あははっ……、もう、先輩はほんとに正直だよね」
「あぁ。自分に嘘ついて生きんのもしんどいだろ。BLが好きってことだけ必死に隠してるけど、それだって本能のまま好きなことしてるよ」
「良い意味で正直なんだよね。俺も、そうなりたい……」
未早の眼は、気のせいかもしれないけど少し潤んで見えた。
「ばーか、何が難しいんだ? 絶対なれるよ。俺といれば」
彼の頭に手を回し、キスをした。
「敬語外れたじゃん」
「あぁ……でも、本当にいいの? もっと生意気な態度とるかもよ?」
「上等」
このまま、夜の闇に紛れて続きができたらいいのに。
そう思うけど、外にいる間は我慢しようと思った。
今日はとりあえず、触れられただけでも良いとしよう。

「おーし……帰るぞ! 体力作りのために駅まで走って競走だ!」

照れてるのがバレないように、俺は猛ダッシュした。

未早が走ってないことに気が付いて、数分後に彼の元へまた歩いて戻ったけど。