よーし……!
無事未早からBL鑑賞の許可もおりたところで、周りを注意深く見回した。人の気配がないことを確認する。
「紅本先輩? 急にどうし……んっ!」
不思議そうに見上げる未早の唇を、ほぼ押し付けるようにして塞いだ。やっぱり昨日と同じで柔らかい。もっと強く吸い付いたらどうなるのか。自分でも分からず、恐ろしい。
「ん……っ」
舌が入り込みそうになる。……ところで、慌てて彼から離れた。
「ごめん、急に」
もしかしたら怒らせたか、と思ったけど、
「謝ることないでしょう。……付き合ってるんだから」
未早は自分の唇を舌なめずりして笑った。
エロい。それが素直な感想だった。
「じゃ、続きは部活終わってからにしましょう! そろそろ戻らないと怪しまれますよ」
「お、おう。練習しなきゃな」
彼の掛け声に後押しされて踵を返す。未早は俺以上に切り替えのオンオフが早い。見習うと同時に、ちょっと悔しい気になるのは……恋人というより、歳上としての意地のせいかもしれない。
そしてその放課後練習も終わり、部員がバラバラに帰って行く中……。
俺達は誰もいなくなった倉庫室で、またさっきの“続き”をした。
「は……っ」
教室の鍵を職員室に返さなきゃいけないけど……あと少しだけ。その、あと少しがどんどん伸びていく。未早を壁に押し当て、彼の唇を味わった。
付き合ってまだ数日だっていうのに、我ながらしょうもない発情っぷりだ。
健全な小説ならこんな早くにチョメチョメしないよなぁ……とか考えながら。こんな時にまで創作のことを考えてしまう自分に、ちょっと腹が立った。
「先輩、キスもいいけど、もっと舌も使いましょうよ」
「え! もしかして下手だった?」
「や、そうじゃないけど、先輩すごい吸ってくるから唇痛くて」
未早は苦笑しながら頬にキスしてくる。
「先輩、表情も仕草も固すぎですよ。そりゃ俺も緊張してますけど、いつもみたいにしてくださいよ」
「いつもみたいにって、どんな? 俺いつもどんな感じだっけ? 全然思い出せん」
「落ち着いて。先輩の好きなようにしてください。好き勝手していいんですよ」
彼はそう言って両手を上げたけど、なにか違う気がした。好き勝手という言葉のせいかもしれない。
俺だけ楽しみたいわけじゃない。
本当は二人で気持ちよくなりたいのに……経験がないせいで、どうも上手くいかない。
「……何かごめんな、未早。あんまエロい気分にさせてやれなくて」
「えぇっ? 何言ってんです。俺、かなりその気になってますけど」