小説はあくまで創作物。誰かが生み出した架空の世界。フィクションなんだからささいな事は気にせず楽しむべきだった。そんな基本的なところが俺には欠けている。
最初のショックが強すぎたけど、幸せの形は人それぞれ。そこを履き違えちゃいけないんだ。

先輩は……。

少しだけ奥の部屋を覗くと、先輩はBLとは関係なさそうな書き物をしていた。
今なら18禁の本を見てもバレないかもしれない。
とにもかくにも俺は知識が乏しすぎるんだ。ここは置いてある本を全て読破しよう。先輩のことは抜きにして、もっともっと、俺はBLのことが知りたい。
そう思って、結局興味津々のR指定の漫画を手に取った。

────やがて、時が経つのも忘れるほど耽読していた。

日は傾き、部屋の中は窓から射し込む夕焼け色に変わってきてる。
読んでいた漫画は悲しい話も楽しい話もあり全体的に面白かった。それは良かったんだけど、ここで一つ大事件が発生した。

先輩の言うとおり、やっぱり俺には刺激が強すぎたのかもしれない。どエロいイラストばっか見ていたから、アソコが。

あ、あれ?

……反応しちゃってる。
そんな俺の元へ、限りなくバッドタイミングで紅本先輩がやってきた。
「未早お前、ずっと本読んでたのか? ったく、無理すんなっつってんのに……」
ちょっ何で今来ちゃうんだ。俺は呪われてるのか。
「あのさ、苦手なもんを無理して読む必要は本当にないよ。別に意地悪で言ってるんじゃなくて、俺個人としてそう思う」
「いえ、面白かったです! 十冊は読みましたよ。レポート書けますが、書きましょうか?」
「いや、いいよ……」
先輩は神妙な顔で隣に座ってきた。だから、何でこんなときに限ってそんな近付いてくるんだ!
アソコが反応してるのがバレる。咄嗟に持っていた本を膝元に置いて隠した。先輩から見えないように。……ところが。
「あ! お前、その漫画18禁だぞ! 見ちゃダメだって言ったろ!」
「うわああぁぁっだめだめ、ちょっと待ってください!」
先輩は俺の持ってる漫画に気付くと、強引に取り上げようとした。いや───ムリムリ今それをされたら死ぬ!

奪われないように、そこはかなりしっかり漫画を押さえ込んだ。