深夜の学校。あっという間に着いてしまった。
こんなところで煉獄のスケキヨとオフ会をやることになるとは、まさか夢にも思っていなかった。
どうしよう。来たはいいけどこんな閉鎖的な空間のどこへ行けというのか。当然のこと、校門は閉まっている。
「これ、入れなくね?」
願望込みで、自問するように呟く。ためしに校門を押してみる。あっさりと動く。マジか。鍵なんてかかってないぞ。どういうことだ。……どういうことも何も、煉獄のスケキヨが開けたのだろう。入って来いという意味だ。アホな俺でもそれぐらいは分かる。
校内に入ると、ご丁寧に順路の蛍光シールが貼ってあった。それは上へと続いている。
マジかよ。まるでオバケ屋敷じゃねえかよ。トイレに行きたくなったが、それはそれで何かが出て来そうで怖いので上へ行くことにした。
普通、こういうのってセ〇ムとかが管理していて夜の侵入者とかが出れば見つかって警報が鳴るはずなんだよな。それでも何もないということは、これも煉獄のスケキヨが何かをしている可能性が高い。冗談じゃない。こんなヤベー奴とオフ会だなんて正気の沙汰じゃない。
だが、行かねば俺が的にかけられる。それだけならまだいいが、あいつの性格からすれば岡さんがターゲットになるのは間違いないだろう。それぐらいのことは表情一つ変えずにやるはずだ。
「会ってどうするんだよ」
深夜の校舎で響く独り言。まるで呪詛のようだった。月明かりに照らされ、伸びた自分の影に怯える。いちいち寿命が縮む。それでも俺は前に進まないといけない。
まあ、この際大企業を誤爆してしまった件についてはどうでもいい。騙されて脅されたとはいえ、俺だってデマ情報を拡散してしまったのだ。それについては訴訟でも何でもするがいいさ。
だけど、岡莉奈だけはどうにかしてあげたい。生きる意味のない人生に、彼女が希望の光をくれた。だからこそ俺は今でも生きているし小説を書いて世に届けている。
――彼女がいないと意味がないんだ。
自分でも寒気のするほどクサいセリフを脳内で流しながら、俺は上を目指す。半ば予想通り、矢印の行き先は屋上まで続いていた。
鉄製の思い扉をスライドする。心地よいはずの夜風が、今では無闇に心をざわつかせた。
「来てやったぞ」
無人の屋上に叫ぶ。周囲を見渡すも、白い仮面をつけた怖い男が隠れている気配はない。いや、そんなのが本当に屋上に潜んでいたら恐怖でウンコを漏らすだけなのだが。
「誰もいねえな」
半ば安心しながらひとりごちる。
結局は手の込んだイタズラだったのか。そうか、そうに違いない。良かった。本当にヤバい奴とオフ会なんかにならなくて。
「やっと会えましたね」
ボイスチェンジャーで変えられた声。心臓が跳ねる。軽くチビった。
腰を抜かしそうになりながら振り返る。人影――さっきまではいなかった誰かが、屋上のフェンス際にいた。
「お前が……」
煉獄のスケキヨなのか?
そう訊くはずだった。
だが、人影に近付く俺はその場でフリーズした。
「は?」
目の前の光景が理解出来ず、俺はひたすら固まる。
人間というものは、あまりに理解しがたいものに出くわするとフリーズする仕組みになっているらしい。
「やっと会えたね」
ボイスチェンジャーをオフにした声。
嘘だろ? なんでだよ? 信じられない……。
胸がざわつき、意味の分からない吐き気がこみ上げる。
深夜の学校という舞台にそぐわない美少女。
――そこに立っていたのは、岡莉奈だった。
こんなところで煉獄のスケキヨとオフ会をやることになるとは、まさか夢にも思っていなかった。
どうしよう。来たはいいけどこんな閉鎖的な空間のどこへ行けというのか。当然のこと、校門は閉まっている。
「これ、入れなくね?」
願望込みで、自問するように呟く。ためしに校門を押してみる。あっさりと動く。マジか。鍵なんてかかってないぞ。どういうことだ。……どういうことも何も、煉獄のスケキヨが開けたのだろう。入って来いという意味だ。アホな俺でもそれぐらいは分かる。
校内に入ると、ご丁寧に順路の蛍光シールが貼ってあった。それは上へと続いている。
マジかよ。まるでオバケ屋敷じゃねえかよ。トイレに行きたくなったが、それはそれで何かが出て来そうで怖いので上へ行くことにした。
普通、こういうのってセ〇ムとかが管理していて夜の侵入者とかが出れば見つかって警報が鳴るはずなんだよな。それでも何もないということは、これも煉獄のスケキヨが何かをしている可能性が高い。冗談じゃない。こんなヤベー奴とオフ会だなんて正気の沙汰じゃない。
だが、行かねば俺が的にかけられる。それだけならまだいいが、あいつの性格からすれば岡さんがターゲットになるのは間違いないだろう。それぐらいのことは表情一つ変えずにやるはずだ。
「会ってどうするんだよ」
深夜の校舎で響く独り言。まるで呪詛のようだった。月明かりに照らされ、伸びた自分の影に怯える。いちいち寿命が縮む。それでも俺は前に進まないといけない。
まあ、この際大企業を誤爆してしまった件についてはどうでもいい。騙されて脅されたとはいえ、俺だってデマ情報を拡散してしまったのだ。それについては訴訟でも何でもするがいいさ。
だけど、岡莉奈だけはどうにかしてあげたい。生きる意味のない人生に、彼女が希望の光をくれた。だからこそ俺は今でも生きているし小説を書いて世に届けている。
――彼女がいないと意味がないんだ。
自分でも寒気のするほどクサいセリフを脳内で流しながら、俺は上を目指す。半ば予想通り、矢印の行き先は屋上まで続いていた。
鉄製の思い扉をスライドする。心地よいはずの夜風が、今では無闇に心をざわつかせた。
「来てやったぞ」
無人の屋上に叫ぶ。周囲を見渡すも、白い仮面をつけた怖い男が隠れている気配はない。いや、そんなのが本当に屋上に潜んでいたら恐怖でウンコを漏らすだけなのだが。
「誰もいねえな」
半ば安心しながらひとりごちる。
結局は手の込んだイタズラだったのか。そうか、そうに違いない。良かった。本当にヤバい奴とオフ会なんかにならなくて。
「やっと会えましたね」
ボイスチェンジャーで変えられた声。心臓が跳ねる。軽くチビった。
腰を抜かしそうになりながら振り返る。人影――さっきまではいなかった誰かが、屋上のフェンス際にいた。
「お前が……」
煉獄のスケキヨなのか?
そう訊くはずだった。
だが、人影に近付く俺はその場でフリーズした。
「は?」
目の前の光景が理解出来ず、俺はひたすら固まる。
人間というものは、あまりに理解しがたいものに出くわするとフリーズする仕組みになっているらしい。
「やっと会えたね」
ボイスチェンジャーをオフにした声。
嘘だろ? なんでだよ? 信じられない……。
胸がざわつき、意味の分からない吐き気がこみ上げる。
深夜の学校という舞台にそぐわない美少女。
――そこに立っていたのは、岡莉奈だった。