浩国の背中を流す事は即ち、彼の入浴……もとい裸の彼を見るという事になる。
 全てを理解した春蘭はいやいやいや! と顔を赤くさせながら両手を左右に振り続けた。

「ダメか?」
「えっとその……いやという訳では無いのですけれど」
「なら決まりだな」

 強引だな! と胸の中で悪態をつくも、春蘭に嫌という気分は無かったので、致し方なく彼の入浴に同行したのだった。
 浩国が乱雑に衣服を脱ぐ間、春蘭は顔を両手で覆う。

(くっそ恥ずかしい! 恥ずかしすぎて死にそう! いや死にたくないけどさ!)
「春蘭――。背中に湯をかけてくれ!」

 いつの間にか浴室に移動し、かけ湯をした浩国は小さな椅子に腰掛けて下腹部から太ももの辺りに厚手の手ぬぐいをかけ、春蘭にスチルよりもごつごつした背中を見せていた。春蘭は白い薄手の衣服に手早く着替えて浩国の元へと向かう。

(変わったな……)

 彼の背中をまじまじと見つめながら、木桶に湯を入れて彼の背中にゆっくりと掛ける。
 その間、浩国はもうひとつの手ぬぐいを湯で濡らし、石鹸を泡立てていた。

「頼む」

 浩国が振り返る事無く手ぬぐいを春蘭に渡した。受け取った春蘭は手ぬぐいを右手に持ち替え、浩国の右肩甲骨付近からぐっぐっと、擦る手前付近の力加減で洗っていく。