浩国は咀嚼するように首を縦に何度も振った。

「そうだな。相手はあの馬族の者達。保険はかけておいた方が良いだろう」
「ご理解いただき感謝いたします」
「とりあえず、そなたと意見を交換したい。もっと話を進めても構わないだろうか?」

 春蘭が勿論でございます。と返事をすると浩国はわかった。と言い人払いを命じた。
 春蘭はお飲み物でもお持ちしましょうか? と浩国に尋ねると、彼は良い。と断る。

「気遣い感謝する」
「いえ、それほどでも……」

 ふふっと笑う浩国を見た春蘭は最初会った時よりもだいぶ表情が柔らかくなったなあ……。と心の中でつぶやいた。

「では話を進めよう。和睦……いや、に関してはこちらから申し出る」
「お願いいたします。やはりすぐには和睦とはいきませんか」
「交渉が必要だからな。相手も一筋縄ではいかぬ。話の内容はこうしよう。わが妃のひとりがそなた達を料理でもてなしたい。とな」

 浩国からの提案を聞き届けた春蘭は、腕組みをして考え込む。

(怪しまれないかなあ……?)
「あの、陛下。直接おっしゃるのは良い案だと私は思いますが、相手に怪しまれませんかね? 毒を盛られる。とか」
「それなら大丈夫だ。そなたが料理を作る場面を馬族の者達に見せれば良い」