しばらくすると春蘭の自室にやってきたのは雄力ではなく、浩国だった。

(えっ浩国が来た!)

 驚く春蘭に浩国は、何か考えがあると聞いたが? といつものぶっきらぼう気味な口調で問う。
 彼の後ろではさっき雄力を呼びに行った女官が必死に頭を下げていた。

(仕方ない、腹を決めろ!)
「結論から申しますとですね、和睦をすべきかと存じます!」
「なぜだ?」

 浩国の言葉が春蘭の胸をド直球で射抜く。しかしこんな事でへこたれる春蘭もとい花音ではない。

「戦が発生すれば民の犠牲が増します。それに向こうだって何か言い分があると思うのです。こういう時は……その、皆で鍋を囲うとか、ですね……」
「ああ、その考えがあったか」

 何かをひらめいた浩国に対して、きょとんとした様子の春蘭はえ? と返す。

「春蘭。そなた、馬族の者を料理でもてなしてくれないか?」