(激おこじゃん! 何したのよ! でもこのまま逃げるのはなんだかもやもやするなあ……)

 このまま逃げれば自身の命が助かる確率は高い。だが、それはそれで馬族に負けたというのを認めなければならないと言う点が春蘭の胸の中を不快にさせる。

「あの、私が言うのもなんですが和睦という道はないんですかね……」
「……金賢妃様。お気持ちは痛い程よくわかります。しかしながら後宮の妃達には(まつりごと)に関して言い出せられないもので……」
(そうだよね。モブ賢妃にはそんな権力ないもんね……)

 だが、春蘭の心の中は踏ん切りがつかないでいた。それに浩国の事も気になってしょうがない春蘭は、ある事を想いつく。

「ちょっと浩……いや、陛下に直談判してきます」
「いや、それはまずいですよ金賢妃様!」
「じゃあ雄力さんにお会いします!」
「そ、それなら……私がお呼びしてまいります」

 という事で女官は慌てて雄力を呼びに行ったのだった。