厨房に到着すると早速宮女達や、駆けつけてくれた皇帝直属の料理人達に挨拶をしてから叉焼をはじめ、料理を作る準備に取り掛かる。
　
（バランスを考えてとりあえずハンバーグはまた今度にしようかな……。ハンバーグの要領でつくねを作って豚肉のしゃぶしゃぶと一緒に鍋に入れよう）

　といった具合でギリギリまで品々のバランスを考慮して、何を作るか指示を出した。
　厨房の近くにある大広間では、皇帝である浩国を迎え入れるべく、女官達の手で飾り付けがはじまっていた。机など配置の指示についても、春蘭が請け負っている。

「金賢妃様。円卓の種類でございますが、こちらの朱塗りのもので構いませんでしょうか？」
「良いと思います。大きさも丁度良い感じかと」
「金賢妃様。生け花のご確認をお願いします」
（私こういうのには詳しくないからわかんないんだよなあ……どうしよ……）

　う――ん。と詳しくないと正直に伝えるか否かを考えた末、ちゃんと正直に伝える事にした。

「あ、あの、華道に詳しいお妃の方いらっしゃいますかね？　ちょっと私自信が……」

　困った様子を見せる春蘭の後ろに、ある妃が女官を連れて現れた。

「金賢妃様。わたくしがご確認いたしましょうか？」
「周充儀！」

　春蘭が後ろへ振り返るとそこには周充儀と雪が立っていた。

「たまたま近くを通りがかったら何やら準備をしているご様子にお見受けしましたので、お邪魔させてもらいましたわ」