また、生臭さも調味料をしっかり漬け込んでいる事で、春蘭からすればほぼ感じない程度となっている。

「陛下は叉焼をあまりお好きではなかったのですよね?」
「陛下がまだ幼子だった時に食事に出され、嚙み切れなかったのが原因と伺っております」
(ああ……子供の時の嫌な記憶って大人になってからも残るもんね……)
「なるほど、教えてくださりありがとうございました。これくらい薄く切って、で、更に縦に切ってみますね」

 春蘭が包丁をもらい受け、薄く切られた叉焼のうちの3枚ほどを重ねて縦に細かく切っていく。

「これをごはんの上にかけて頂くと、美味しいかと存じます」
「なるほど叉焼飯(チャーシウハン)みたいですね」
「豚肉を漬け込んだたれを少しかけていただけば、ご飯が進む味わいになるかと」

 ここで宮女があっ! と声を挙げた。

「お気づきになられましたか。金賢妃様。実はそれ、よくまかないで頂いているのですよ」
「そうなのですか。陛下にも召し上がっていただきましょう」

 その後。あれこれ試作が終わると春蘭は一旦栄華宮の自室に戻り昼餉を取って架子床の上で仮眠を取った。

「金賢妃様。そろそろご準備のお時間でございます」
「さあ、行きますか!」

 春蘭の号令の下、女官達は栄華宮内の厨房へと移動した。