「さて、もう時間だ。戻らねばな」
 
 席から立ち上がった浩国を春蘭は名残惜しそうに見上げた。

「時間が経つのは早く感じますね」
「そうだな、俺も春蘭と同じ考えだ」
「……また、お会いできますか?」
「その事についてだが。俺にある考えが思いついた」

 真剣なまなざしを浮かべる浩国を見た春蘭は、眠気を飛ばしてきりっと目つきを変える。

「明日の夕餉だけで良い。俺に料理を作ってほしい」
「わかりました! お望みとあれば!」
(よし、早速肉と魚の料理を作ってだそう! 明日の朝にもっかい叉焼の試作をして、それから……)
「何か考えているのか?」

 浩国から指摘され、春蘭は慌てていや! と返事をする。

「という事だ。夕餉はそなたがいる栄華宮で頂こうと思う。よろしく頼むぞ」
「はい! 陛下!」

 こうして新たな約束が決まった2人は東屋にて解散したのである。

(これは忙しくなってきたぞ……!)

 栄華宮の自室へと戻って来た春蘭は早速女官達を集めた。

「明日、陛下にお出しする夕餉は私が作る事となりました! したがって皆様には栄華宮にて手伝いをお願いしたく存じます!」