その夜。夕餉を終えた春蘭の元に2人の小柄な宦官が訪れた。

「陛下がお茶会をしようとの仰せにございます」
「わかりました。参りましょう」
「では、ご案内致します」

 宦官によって案内された場所は、栄華宮から少し離れた箇所にある中庭。そこには東屋が設けられていた。

「そちらの椅子に座ってお待ち下さい。もうしばらくすると陛下がお越しになりますので」
「了解しました」

 春蘭が椅子に座って数分後。浩国が宦官達を伴い現れた。
 その身体つきは最初に出会った時からほんの少しだけ、頑強さが増したようにも見える。

「陛下……お会いでき光栄でございます」
「春蘭。なかなか会えなくてすまないな」

 宦官達が東屋内にある朱塗り円卓の上に、茶器や天心などを並べて行く。

「どうぞ、おくつろぎくださいませ」

 宦官達が東屋から出ていくと、春蘭は浩国とふたりっきりになる。

(うわあ……なんて話したらいいんだろ)
「春蘭」
「は、はい」
「また、そなたの作る料理が食べたい」

 直球で来た浩国に、春蘭は目を満月のようにさせる。