馬族とはこの国……彩国の北に住まう北方民族のひとつで、長年敵対関係にある。騎馬民族である彼ら、いや彼女達は何度も戦をしかけては略奪を繰り返してきた。

(雰囲気はアマゾネスというか、女子プロレスみたいなそんな感じなんだよね――。族長は華奢でスチルにはかわいい子も何人かいたりするんだけど)
 
 馬族は女性優位な社会で、族長は代々女性が就任する。この族長という位置は同じ一族の者が継承するのではなく、20歳を迎えた族内の女性達全員が参加する武術大会でふるいにかけられ、そこから族内の5歳以上の者全てに投票権のある選挙によって選ばれるのだ。

(確か族長でいられるのは50歳までで、50歳の誕生日を迎えた族長はそのまま馬族から去り、自ら命を絶つかどこかへと姿を消すのが通例なんだよね。ちょっと残酷だけど)
 
 ちなみに馬族は女性優位な社会だが、男性も勿論存在する。あくまで族内で優位なのは男性ではなく女性であると言うだけだ。

(忙しいなら、当面お会いするのは無理そうだな。さすがに浩国の所へ行って邪魔する訳にもいかないし)
「もしよろしければ、陛下にお伺いを立ててみましょうか?」

 宇翔からの提案に、春蘭は本当ですか? と返す。

「ええ。陛下も金賢妃様の手料理には深い関心をお寄せになっておりますので、お喜びになるかと」
(じゃ、じゃあ……お願いしようかな)
「では、お願い申し上げます」

 春蘭が宇翔に頭を下げると、宇翔はにこりと笑った。