こうして春蘭は栄華宮の厨房の一区画を借りて、試作品を作ってみては厨房や、女官、妃達からの反応を見る日が続いた。好反応だったものはその都度作り方を紙に書き留め、皇帝直属の料理人の元へと届けたのである。
　そして宇翔からの報告日が訪れた。

「おはようございます」

　宇翔が訪れたのは、春蘭が朝食の雑炊を頂いている時だった。

「おはようございます。宇翔さん」
「約束通り、陛下の食事情についての報告にあがりました」

　宇翔はこの日もミステリアスな雰囲気を漂わせながら、微笑みを浮かべている。

「宇翔さん、どうでしたか？」
「ええ、本当にしっかり召し上がってくださっておりますよ。そのおかげか顔色もよくなったようにお見受けします。雄力殿達による武術の鍛錬も逃げ出す事無く真っ向から挑んでおります」
（そうなんだ。会いたくなってきたなあ……）

　また陛下にお会いしたい。と呟いた春蘭に、宇翔は少し暗い表情を見せる。

「今は北方民族の侵攻により多忙を極めておいでですからねえ……多忙な中でも朝昼晩欠かす事無く食事をされていらっしゃるのは、医者である私からすればとてもありがたい事ではありますが」
（北方民族……ゲームに出てきた馬(マァ)族の事かな？）