「何かお考えのようでございますね」
「はい。陛下が頂くような魚料理、肉料理ってなんだろうなと思いまして……」
(魚と肉は生臭いのが無理だと言ってたしなあ……)

 女官は迷うようにして首を右に傾けると、すっと向き直り頭をほんの少し下げて口を開く。

「やはり硬くなくて臭みも気にならないものにはなるかと存じます。私はまだ新人なので、陛下がどのような方なのかは詳しくは存じ上げないのですが……なので間違っていましたら申し訳ありません」
(そりゃあそうだよな)
「いえいえ、気にしないでください」

 両手を軽く振る春蘭は、やはり生臭いのが無理なら薄い肉の方が良いんだろうなあ……。と考え始めた。

「あ、待てよ……。無理に塊の肉を食べさせなくてもいいんじゃない? 薄い肉や挽き肉でも十分なんとかなるかも」

 春蘭の頭の中には、しゃぶしゃぶ用の肉にハンバーグや水餃子、そして薄く切った叉焼(叉焼)に、薄めのとり天の姿が映し出される。
 そして白徳妃の声で、無理はしなくてもよいのですよ? というセリフが再生された。

(そうじゃん! 塊にこだわってたかも……!)

 早速春蘭は、栄華宮内にある厨房に足を運ぶ。

「すみません! 厨房お借りします!」

 まさに思いついたら一直線。春蘭は宮女達の力も得てお肉と小麦粉などの材料を調理台の上に並べた。